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乙ー弐
「ごめん。それは、義理なんだけどね。」

帝に申し訳なさそうに薫はチョコを差し出した。

しかし、帝はそれでもかまわない様子で薫のチョコを受け取った。

「いや、まさかこのような素晴らしいものがもらえるとは思っていなかったのでな。」

(義理だって意味、わかってるのかな…)

とはいえ、何度もそれを繰り返し言うのも酷というもの。

とりあえず帝があれやこれやとチョコを眺めるのを薫は、ぼんやり見ていた。

ふと、帝がはっとしたように薫を見た。

「そなた。」

「…ん?」

「想い人にちょことやらを渡しには、行かなくて良いのか?」

「ぶっ…。」

まさか帝に言われるとは思っていなかったので、思わずむせた。

どうやら、帝にはお見通しだったらしい。

「確かに私がそなたの想い人でないことは残念だが、私はそなたには幸せになってもらいたいと思っている。

そなたの笑顔が好きなのだ。だから、早く行くといい。」

帝は薫をまっすぐに見つめ、そう促した。

「帝…。」

「その先は言わないでくれ。私もそなたを送り出しにくくなる。」

帝は優しい人だと思った。

薫は、帝の心遣いに感謝して内裏を出た。


(なんだか、悪いことしちゃったわ…。)

そんなことを思いながら憂鬱な気分に浸っていると、前方から永泉が歩いてくるのが見えた。

「永泉。」

「薫殿…主上に会いに来られたのですか?」

「ええ、もう用事は済んだけど…。」

「そうですか。どこか、元気がないようですね。」

永泉はそういって薫の顔を見た。

しかし次の瞬間、はっとしたように永泉は


「申し訳ありません。私としたことが…。」

などと一人で混乱し始めた。

「ううん、気にしないでいいわ。

確かにちょっと悩み事があってね。」

何故だろう、気づけば永泉にバレンタインのことをぽつりぽつりと話しかけていた。

永泉は静かに薫の話を聞いてくれていた。

「そのような行事が…。」

「うん、それでね。ぁ、そうそう。


永泉にもあげるわ。」


義理チョコを渡す

本命チョコを渡す





あきゅろす。
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