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甲ー弐
「……。」

薫が差し出したものを、不審そうにアクラムが見つめた。

沈黙が痛い。薫は、チョコを差し出した手をどうするか思い悩んだ。

だらだら冷や汗が流れてくる。

そんな薫を前に、アクラムが口を開いた。


「先ほどシリンが騒いでいたのは、これか?」

「…うん。アクラムに受け取って欲しいの。」

「そうか。」

意外とすんなりとアクラムは薫から、チョコを受け取った。

「ではな。」

「あ、うん…じゃあね。」

ひらひらと手を振り、アクラムが見えなくなってから薫は大きくため息をついた。

(チョコ渡すのってこんなに緊張するんだ…)

ほんの短い時間だったのに緊張してしまった自分改めて自覚し、本命のときは一体どれだけ緊張するのかと薫は憂鬱な思いに駆られた。

(でも、シリンがせっかく準備してくれたんだから…。)

薫は自分に活を入れるように、頬を叩いた。

「何してんだよ。薫。」

「きゃあ!!」

突然肩に手を置かれて驚いた薫は、腰を抜かした。

「おいおい、大丈夫か?」

「ありがと…。」

声をかけた主はセフルだった。

セフルはいつもより落ち着きのない表情の薫を、不審に眺めた。

(ああ、視線が痛いわ…。)


「はい、セフル。」

薫は、観念してセフルに……

義理チョコを渡す



本命チョコを渡す


あきゅろす。
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