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丙ー弐
「…はい。」

「なんだね?これは。」

「バレンタインのチョコ。

日頃お世話になっている人にあげるの。だから…」

薫は、顔を真っ赤にして友雅を直視できずにいた。

本命ではないといえ、殊の外、チョコを渡すという行為は恥ずかしかった。

「そうかい?本命ではないのが残念だね。」

「なっ…。」

友雅の言葉に思わず絶句した。

友雅はいたずらっぽく笑って、薫の頭をなでた。

「実は前に、神子殿から話しを聞いていたのでね。」

「……。」

あんなに緊張したのがまるで水の泡だ。

「まぁ、可愛い娘の顔が見れたから許すとしよう。

行っておいで、本命ちょことやらを渡しにいくのだろう。」

友雅は薫を開放して、微笑んだ。

「大丈夫、薫なら。」

いつもより優しい友雅の口調は、どことなく父親っぽくて薫も自然と顔が緩んだ。

「…うん。」

友雅に見送られ、薫は京の往来へ繰り出した。


とはいえ、バレンタインなどと騒いでいるのは自分だけで、彼が何所にいるかなど予想もつかない。

本命の相手ぐらいはちゃんと事前に呼び出しておくんだった、などと薫は、頭を抱えて後悔した。

「何をしている。」

「きゃぁ!」

急に後ろから声をかけられて、思わず悲鳴を上げた。

「闇からわいて出てこないでよ…。」

薫は冷や汗をかきながら、声をかけた張本人である泰明を見た。

いつも突如としてドッキリする登場の仕方をする泰明だが、特に今日はそういう行為はやめてもらいたい。

「お前の気がしたから、来ただけだ。」

(エスパー…?)

嬉しい反面、ちょっと怖い。

薫は、そんな泰明とチョコを交互に見る。

「なんだ?」

「いや…えっと、はい。」

薫は……

義理チョコを渡す


本命チョコを渡す








あきゅろす。
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