丙ー壱
やはりここは、世話になっている義父もとい友雅邸へと向かった。
固より薫としては、義父という認識はあまりないのだが…。
橘低につくと、女房たちが寄ってきた。
なぜか知らないが、バレンタインというものを彼女たちは知っていた。
どうやらシリンの手配らしい…それにしても根回しが良すぎる。
『姫様、頑張って下さいませ。』などと女房たちに見送られ、手を振って別れた薫は、友雅のいる部屋へ向かった。
(娘じゃなかったら、こんな部屋にも入れないわね…。)
薫は、友雅の養女であることに少し感謝した。
しかし、養女という言葉が少し寂しく感じられたのもまた事実。
(友雅はどう思ってるのかな…。)
そんなことを思っていると、友雅が視界に入った。
「やぁ、お帰り。薫。」
にっこりと微笑みながら、薫を出迎える友雅の傍らには珍しく女性の姿が見えない。
薫は不審げに首をかしげて友雅を見たが、
「毎日、女性と会うほど私は暇人ではないのだよ。」
と友雅は微笑んだだけだ。
「それで、今までどこに行っていたのかね?」
友雅はそれとなく薫に問うた。
「えっと……秘密。」
鬼の洞窟、なんて口が裂けてもいえない。
すると、ふっと笑って友雅は突然薫を抱き寄せた。
(……っ!?)
「秘密…とは魅惑的な言葉だね。」
友雅は低く、囁いた。
こううい日にこういう行動をとられると、正直焦る。
(…このままだと身が持たないわ。)
どうにかして、自分の心臓の鼓動の速さを友雅に聞かれる前に離れようと思い、
薫は……
義理チョコを渡す
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