甲ー壱
とりあえず、洞窟内を詮索していたところ、ばったりアクラムと会ってしまった。
バレンタインという一大事であたふためいている時に、アクラムのような落ち着き払った人に会うと妙に緊張するのは何故だろう。
「あ、アクラム。」
薫は、いつになく声をかけたはいいものの、その後の言葉が見つからずに言葉を濁した。
「どうした?」
「え、ええとね。」
手に汗が噴出した。チョコが溶けるんじゃないかというぐらい、緊張する。
「先ほど、シリンが騒いでいたが…何かあったのか?」
「いや、別に…。」
シリンのことだ、『来年は私も参加するよ』と言っていたぐらいだから今から張り切っているのかもしれない。
薫も少なからず、バレンタインではシリンと敵になってしまうのだろう。
哀しい哉、恋に燃える乙女は友情を超えて、愛する彼を奪い合う主義らしい。
シリンからの宣戦布告、薫は……
義理チョコを渡す
本命チョコを渡す
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