壱
平安京に、『バレンタイン』というカタカナ言葉が存在するはずがない。
しかし薫には、やはり大事な一日だった。
…想いを伝えたい。
そんな葛藤で思い悩む日々、同じ女性であるシリンに相談したところ、シリンは感動して薫に賛同した。
「姫には日頃から世話になってるしね。私がどうにかしてあげるわ。」
シリンは自慢げにそういい、前日の2月13日にチョコの材料と思われる一式をそろえてくれた。
そして、改良に改良を重ね、完成した本命チョコ。
失敗したいくつかの作品は、食べれないわけではないので義理チョコにまわそうかと考えた。
薫は、完成したチョコを胸に抱えて静かに眼を閉じる。
(受けとって、くれるかな。)
平安京にてバレンタイン〜故に貴女を請う編〜
「シリン。」
とはいえ、まず渡すべきはやはり世話になったシリンだ。
成功したチョコの一部を差し出すと、シリンは目を丸くして薫を見た。
「私にくれるのかい?」
「うん、シリンがいなかったら今日実行に移せなかったし。」
正直なお礼の気持ちだった。
シリンはチョコを受け取ると、薫の背中を押した。
「姫なら大丈夫だよ。行って来なさい。」
シリンの言葉がとても心強い。
薫は一度頷き、シリンに見送られて彼のもとへと向かった。
向かった先は…
洞窟(アクラム&セフル&頼久)
内裏(帝&永泉&イノリ)
橘邸(友雅&泰明&詩紋)
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