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「なんでついてきたんだよ!勝利!」
水面に浮上したや否や、有利は勝利に怒鳴った。
「こうでもしないと、お前は俺を連れてこないからなっ!」
しかし、冷静に周りを見回した村田と薫は、二人を諌めた。
「勝利も、有利も、そんなことしてる場合じゃないわよ?」
薫の言葉に、はっとして辺りを見回す。
ここは、どこかの池のようだ。
眞王廟とは似ても似つかない。
「ここは?」
「眞王廟じゃないことは確かね。」
「そんな!?なんでっ!?」
混乱した有利が、村田に問う。
「おい!誰か、いないのかっ!?
コンラッド!ヴォルフラム!ギュンター!ウルリーケ!」
渋谷が叫ぶものの、全く返事がない。
鳥の声と、水のせせらぎの音だけだ。
「どうやら、到着地点がずれてしまったようだね。」
村田は、勝利を半ば睨めながら言った。
「俺が一緒だったせいか?」
勝利も、思わず顔を苦くする。
「そうですね、渋谷のお兄さん。」
「ガーン!?」
村田の鋭い一言に、勝利は大打撃を受けた。
「まぁ、でも来ちゃったのはしょうがないわよね…。」
「うう…。優しいのは、わが妹だけか!」
「ちょっと、抱きつかないで!今は、それどころじゃないでしょう!」
薫は、あわてて勝利を突き放した。
水の中なので、少々動きづらい。
ふいに、ガサッと草陰が鳴る。
(誰か来る?)
薫も目を光らせ、耳を研ぎ澄ませた。
足音が近づいてくる。
「まぁっ!?陛下、それに猊下まで!?」
「ニコラッ!?ヒューブ!?それにエルまで?」
有利が驚いたように叫んだ。
そう、そこに現れたのは、鴛鴦夫婦で有名な、
かのニコラ達であった。
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