[携帯モード] [URL送信]

妹ができた。

いや、正式には兄妹ではない。

しかし俺としては、ゆーちゃんと同じくらい

いや、それ以上に可愛がっている妹だ。

ゆーちゃんより、しっかりしていると思いきや、

ただ人に頼ることを知らないだけの彼女は、

いつも一人で解決しようとする。

だから、おにーちゃんが助けなければっ!

と、日々奮闘しているわけだが…

――忘れないでほしい。


――君は、一人じゃない。


おにーちゃんがいますっ!!








五章〜追憶の中で〜


あれから無事に、中間考査も終了した。

もうそろそろ、眞魔国に戻っても良い頃合いのはずだ。

「いつ眞魔国に戻るの?」

学校帰り、薫は村田と有利と

渋谷家へ向かっていた。

最近の日課は三人で、渋谷家に行くこと。

二人で歩くと、校内でつまらない噂がたつためもある。

相変わらず薫は、

校内では冷たくあしらってはいるものの、
面倒くさいことに変わりはない。

「んー、そろそろじゃない?」

有利はのんびり返事を返した。

「じゃあ行く?」

「は?」

あまりにも唐突な村田の返しに、

薫は思わず素で返した。

「せっかくだし、渋谷家の風呂でも借りるかな?」

気づけば、既に渋谷家の前。

(それにしても、急だなぁ…。)

まるっきり、心構えも無視である、

まるで学校帰りにふらっと喫茶店などに寄る心地に近い。

「ただいまぁ〜。」

「ママさん、お風呂借りますね!」

「…お邪魔します。」

さも当たり前のように言う村田に

美子が何か気づいたように言う。

「あらあら、健ちゃんと薫ちゃん!?

眞魔国に行くのよね?

ちょっと持って行って欲しいものがあるの。」

そう言ってリビングに案内される。

美子は得意気に包みか何かを出した。

「これは、ヴォルフラムちゃんに合うと思って買ったお洋服。

防水済みよ。

それから…」

な調子で、グヴェンダル用の漬け物に、

魔族の皆様へ、なクッキーを手渡された。

「向こうに行くのか?」

「あ、勝利。この間は勉強教えてくれて、ありがとうね」

「可愛い妹の為だ、気にするな。」

勝利はさも当たり前のように言ってから、

有利を見た。

「有利、お前は学校の勉強は大丈夫なのか?」

ギクリと有利の肩が強ばる。

「勝利には関係ないじゃん。」

と見栄をはるものの、

「この間の世界史のテスト、

赤点だっただろ。

全く…国民の為にもきちんと勉強しろ。

バカな王に統一されることほど、
哀れなことはない。」

有利に甘い勝利だが、今回ばかりは辛口だ。

「大丈夫よ!

私と村田君でフォローするから。」

意気揚々と薫が言う。

「薫、それ軽くひどくないか?」

しかし、天然故か薫は首をかしげただけだ。

「残念、渋谷。

まぁ勉強するしかないってことじゃない?」

「うわっ、ひどいなぁ。

村田まで。」

――そう、これが日常。

今まで知らなかった暖かみを、

薫は知っている。

家族と呼べる仲間達、
記憶がないとしても感覚だけは残っている。

―――『今』を幸せに思う。


―――とても、切実に。



「良し、じゃあ行こうか?」

「うん、そうね。」

そうして、再びあの場所へ

魂のあるべき場所へ


―――私は還る。


はずだったのに。









あきゅろす。
無料HPエムペ!