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学校が無事終わり、周囲の視線を無視しながら、村田とともに薫は校門へ向かった。
「あれ?校門に誰かいるね」
待ち合わせ場所は、駅前である。
有利と村田たちの学校がおわる時間と誤差があるためだ。
有利は少々遅れるらしい。
「やぁ、弟のお友達。そして、薫」
「え〜と、渋谷のお兄さん?」
すでに呼び捨て。
「勝利さんだっけ?」
薫が聞くと、いかにも誇らしげにうなずいた。
「おにーちゃんと呼んでくれてかまわないぞ」
「いや、さすがにそれは…」
薫としては嬉しいが、さすがに恥ずかしい。
「そうか、残念だな」
意外にあっさりしている勝利。
どうやら、薫の制服姿をみただけで満足したらしい。
「制服、似合っているな」
「はぁ、どうも」
(制服でほめられた…)
女としては、微妙な心境である。
いつの間にか二人の世界になっているのを見かねた村田。
「はいはい、早く行きましょう」
「ああ、そうね」
歩き出した村田に、薫が続く。
「弟のお友達のくせに…」
勝利は舌打ちを知る勢いで、村田をにらんだ。
村田はまるでお構いなしで
「お兄さん、置いてきますよ〜。」
お茶らけ声で、そういった。
「お兄さんと呼ぶな!!」
そう叫びつつ、勝利もあわててあとについた。
駅前に着くと、美子が先に待っていた。
「ゆーちゃんは、もうそろそろ来るわよ」
その言葉どおり、10分ほど送れて有利も到着。
そうして、類まれなるメンバーによるショッピングが始まった。
もちろん、今回男衆は荷物もち係なのだが。
「きゃあぁぁ!可愛い!!」
店に入るや否や、嵐のごとく試着をはじめた美子。
しかし、どれもフリルのようなものがついた、ファンシーなものばかり。
本当の親子、いや、それ以上の接し方で薫の服を選んでいく。
「え〜と、美子さんは着ないんですか?」
「何言ってるの!今日は、薫ちゃんの服を選びにきたのよ。ゆーちゃんの彼女なんだから、言いっこなしよ」
気づけば、『ただの女友達』から『彼女』へ昇格。
「え?」
「はぁ〜、結婚式はどんなドレスがいいかしら、私、あなたに振袖譲ってあげるわ!
20になったらぜひ着てね!
ああ、それとね、私が昔…」
そのまま、美子は一人で話を続ける。
話が勝手に急展開だ。
「あの、私彼女ではないんですけど」
いいにくそうに薫がいう。
「あら?そうなの。でも、そうなる確率がないとはいえないでしょう?ゆーちゃんって、貴女みたいなお友達はじめてみたいだから」
そういう美子は、まさしく母親の顔をしていた。
どことなくツェリに似たものを感じる。
「だから、ゆーちゃんのこと、よろしくね。
でも、貴女も無理しちゃだめよ。女の子なんだからね」
「…はい」
母親とはこういうものだろうかと、薫は感じた。
美子が不意に見せる、母親の顔は薫に暖かい心地を与えてくれる。
「ゆーちゃんたちが待ってるわ。これ、着て出ましょう。」
「ええ!?これ着るんですか…」
今しがた試着した服をその場で購入し、制服ではないその服で店を出ることになった。
今まで、お金をあまり使う機会のなかった薫なので、昨日は服を買いにいくと叔父に言ったら、
『大丈夫か』
と、珍しくまともな返事を返された。
おかげで、お金には困らなかったが、薫にしては珍しく服を買いまくった。
美子は、お金まで払うといったがさすがにそれは遠慮した。
「そのかわり、渋谷家に来るときは、今日買った服着てきてね。」
と美子に念を押され、その場は解散。
美子に言われて、長男こと勝利が家まで送ってくれることになった
本当は勝利が立候補したらしいが。
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