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『なんだ?帰りたくないのか?』
――――――まぁ、帰りたいけど。
曖昧にいってみる薫。
『俺も見ていられないしな。
俺がお前と会えないのに、大賢者や有利達は抜け駆けしすぎだ。』
(そこが問題なの!?)
――――――はぁ、そうかしら?
『お前はわかってないな。
こんなに俺がお前を想っていると云うのに。
力が発動した瞬間はコンラートの腕の中、
決闘が無事終わればヴォルフラムとまさかの接吻、
ヨザックと仲良く夕食作り、
お前の珍しい可愛い趣味の編みぐるみを供に愛でるグヴェンダル、
挙げ句に咲かずの木が蘇ればギュンターが………
まぁ、有利と大賢者だけは多目にみるがな、
お前の地球の知り合いとして。」
眞王はそう言いながら、有利達にも多少の苛立ちを感じているらしい。
口調がより固かった。
ただ、眞王の言葉を受けて、薫は唖然とした。
自分も苦笑いするしかなかった。
地球では男とはむしろ疎遠だった為に、眞魔国での事件の数々は自分でも驚きなのだ。
『そんなわけでお前をあちらに返す。
次に喚ぶのは俺の力がある程度戻ってからだ。』
(なんて勝手な人だ…)
要は、薫にはいてほしいらしい。
だが、他の男に構われるのは許せないのだ。
――――――でも、どうやったら帰れるの?
『今回は、水さえあればなんとかなる。
有利も大賢者もいるしな。
力は申し分ない。』
――――――水?
『風呂で良いだろう。
三人一緒に入れば、俺が手助けして送ってやる。』
――――――ってことはまた濡れるの?
正直、最初もかなり驚いたし、
もうあんな思いはしたくないと思っている。
『あぁ、勿論これからもだ。』
――――――…やだなぁ。
『文句を言うな、
今まで有利達はそれで行き来している。
俺もお前の体が冷えるのが心配だが、仕方がない。』
一応、心配はしてくれているようだ。
――――――心配してくれて、ありがとう。まぁそれならしょうがないか。
薫も諦め良くそう言った。
『お前は物わかりが良くて助かる。』
――――――それは、どうも。
『では、またな。
それと、くれぐれも無理はするなよ。』
――――――…?うん。
(無理って、何のことだろ。)
そう思ったがとりあえず頷いた。
やがて、眞王の声は聞こえなくなった。
(意外と自由奔放な感じだったな…。)
しばらくは、ぼっーとしていた薫だったが、
やがて例の行動に移るため、有利と村田をさがしに行った。
有利は未だギュンターに捕まっており、
村田は自室でくつろいでいたのを引っ張って、
三人で風呂場へ向かう。
「何?どこ行くの?」
ギュンターから救出された有利が言う。
「風呂場よ。」
「「風呂!?」」
びっくり仰天した二人に、薫はあぁと思いついたようにいった。
「さっき、眞王と話したら返してくれるっていうから。」
「はぁ!?眞王って、あの眞王陛下と話したの!?」
「直接ではないけどね。」
さらりと話す薫に対し、
有利は困惑状態だった。
(思ったより、力の回復がはやいなー)
黙り込んだ村田は、そんなことを考えていた。
そうして、あれこれ話していると風呂場についた。
魔王専用なので当然使用者はいない。
ガラッと扉を開けて、脱衣場を抜け、湯船の手間で止まる。
やがて、湯船の湯が波紋を描き始め、濁流となる。
「マジで!?」
(不本意だけど、しょうがないか。)
「行くよ〜渋谷。」
動揺する有利の腕をつかんで、
村田はため息混じりに湯船へ身を沈める。
薫も、愛刀を片手に湯船へ入っていった。
湯船の湯が竜巻を描き始め、やがて
底なし風呂に呑まれていく三人。
そうして、第一回のスタツアは幕を閉じた。
あとがき
ここで一段落です。
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