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気づけば一人、君はいつも頬杖をついて、窓を見上げていた。


いつも声をかけても、君はまるでお構い無し。

――…眞王が知ったらショックだと思ったんだ。

受け継いでいるはずの記憶がない、なんてね。


だからこそ、眞王には教えなかった。


だって、彼女の魂が転生してるなんて教えたら、意地でも連れ戻しそうだし。

別に君を独り占めする気はないけど、君が見えるこの特等席は誰にも渡したくないとも思うよ。


君が、僕を思い出したら…。

君は僕から離れていくのだから…
だから……どうか。


『君が離れていくその日まで』









序章





部活のない放課後、薫はいつものように自宅の庭で自己鍛錬をしていた。

最初は、なんとなく始めた剣道だったが

次第に自分の中に芽吹き始めたモノに導かれるように、鍛錬を積むようになった。


幼稚園からの師範である祖父から時々、真剣での稽古も受けた。


祖父は昔から、身寄りのない薫を可愛がって、何かと構った。

おかげで薫も、気づけばお爺ちゃん子になっていた。


だが、祖父は突然いなくなってしまった。


ただ一人の頼れる家族が。


ほんの半年前だ。

全国制覇のトロフィーを持ち帰ったその日、

病院でそれを見て、涙した祖父の顔が忘れられない。

そして、薫にしか聞こえない声で、


『お前は、立派な騎士になれるよ。』


そう言って、息を引き取った祖父。


あの言葉の意味を薫は、未だに理解しかねていた。


ただ、異常なまでに自分に剣を教えてくれた祖父は、

自分に何か役割を与えて去っていった。

『騎士』


ソレが何なのか、薫は解りかねながらも

祖父の為にその役割を全うしようと強く想っていた。


「ふぅ……。」


一息ついて、庭の池のほとりに座った。

池の水面が、太陽光を反射しながらユラユラとゆれている。


ふと、池の中に見慣れない、

池の中には、そぐわないほどに色鮮やかで綺麗な石を見つけた。

少し濁った池の中で、一際目立って輝く石。

薫は、それを手に取ろうとして、池の中に手をいれた。




「!?」


瞬間、強い力で水中に引っ張られ、

あったはずの浅い池の底を抜けて、やがて全身が水に浸かる。


凄まじい激流の中に揉まれているうちに、

やがて薫は、意識を手放した。


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