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厨房には、薫とグレタ……そして。

「ヨザック!?」

「あら、坊っちゃん。」

ヨザックは、コンラッドとヴォルフラム、有利を見た。

「ユーリ!ヴォルフラム」

グレタが有利の方へ、お皿に何かを盛って駆けてきた。

「これ、グレタが作ったの!」

グレタが持ってきたのは、うさぎまんじゅうだった。

「カオルがね、きっとお仕事終わったら疲れてるだろうから、甘いものも一緒に作ろうって…。
グレタが可愛いもの好きだから、カオルが可愛くしてくれたの!」

有利は、エプロン姿の娘を見て、再び目頭を押さえた。

「グレタ!すごいよ!もう俺、感動しまくり。あぁ!勿体なくて食べれない」

「さすがグレタだな。グレタは良い大人になれるぞ」

親バカ二人がべた褒めするのを聞きながら、グレタは不意にヴォルフラムを見た。

「じゃあ薫は、良いお母様ってこと?」

「「は?」」

(まぁ確かにそうなるのか!?

教えたのは薫だし…。)

そんな風に考える有利の横で、ヴォルフラムは急に昼間のことを思い出して顔を赤くした。

(そういえば、アイツの唇柔らかかったな…。)

「ねぇ?ヴォルフラム。顔赤いよ。」

「ん、な、何でもないぞ、グレタ。
それより、グレタの作ってくれた…」

はしゃぐグレタと親バカ二人を他所に、コンラッドは薫を見た。

「ヨザック、それ弱火にして」

「はいは〜い」

「悪いわね、手伝わせちゃって…」

「いえいえ。好きでやってますからねぇ」

「そう?」

エプロンをしながら、キッチンに立つ二人。

更にグレタが加われば、他人の目にどう写っていたかは、容易に想像がついた。

コンラッドはそれを考えながら、薫が重そうな鍋を持っているのが視界に入った。

「危ないですよ」

足取りが少々危なっかしかったので、思わず後ろから薫の手に自分の手を添えた。

「コンラッド!?…ビックリしたじゃない」

「すみません」

そして、コンラッドに支えられながら、鍋をなんとか机の上に置く。

「謝らなくても良いわよ。ビックリしただけ。でも、今のは危なかったわ。ありがとう」

素直で礼儀正しく、しかし強い志を持った薫に、惹かれていることをコンラッド自身自覚していた。

だからだろうか、ヨザックにまで思わず嫉妬したのは…。

「いいえ、どういたしまして」

「だから、そういう言葉遣いしなくて良いわよ。だいたい貴方の方がそういうのやめようって言ったんじゃない?」

薫が少し不満げに眉をつり上げると、コンラッドは

「ごめん。つい癖で、ね」

と言いながら、薫の頭をなでた。

「な、何?」

「いや、ちょっと髪ゴム下がってきてるから、結び直した方が良いんじゃないかと思って」

「私って髪の毛の量多いから、すぐに緩んじゃうのよね」

「その上にカオルの髪はサラサラだしね」

そうして、薫の頭をもう一度なでた。

「あら?コンラッドには負けるわよ。ぁ、じゃあちょっと髪、結び直すわ」

「じゃあ、手伝うよ。俺が結んであげるから」

「…え?いいわよ」

突然のコンラッドに発言に困惑気味に薫が言った。

「ほら、じっとして」

しかし、気づけばコンラッドのペースに呑まれていた。

「はい、おしまい」

「あ、ありがとう」

心なしか薫の顔が紅い、コンラッドはなんだか満足げだ。

そんな二人のやり取りをみながら、今度はヨザックが小さくため息をついた。

「全く、急にきてそりゃないですよ、隊長。薫も言ってくれれば、手ぐらい貸しますって」

鍋を持ち、フラフラしていた薫のことを言っているようだ。

「…ごめん。」

ばつが悪そうな顔をした薫を見て、逆にヨザックは悪いことをしたような気分になって弁解した。

「まぁ結果的には何もなかったし、良いんですがねぇ」

棒読みっぽくいいながら、コンラッドをチラリとみる。

コンラッドはヨザックと目があっても、全く無反応だった。

「とりあえず、これで終わりだわ」

いつのまにやら、後片付けを終え薫は言った。

「二人とも、ありがとうね」

薫の声に、コンラッドは肩をすくめた。

「残念、もう終わりなんですか」

「なんで?」

「せっかく似合ってるのに、勿体無いと思って。カオルのエプロン姿」

「……」

ヨザックは、一度ならず二度やるかと顔をしかめた。

いつもと変わらぬコンラッドだが、薫はほんのり頬を染めた。

(コンラッドって、天然?)

「どうかしましたか?顔が紅いですけど。」

(前言撤回、策士だ…)

「なんでもないわよ。ほら、もう夕食なんだから先に行ってて」

薫は、慌ててコンラッドを厨房からだそうとした。

「でも、大変でしょう?料理運ぶの、手伝うよ」

しかも、相変わらず親バカ二人はグレタに付きっきりだ。

薫は諦めて、ため息をついた。

「そうね、お願いするわ。コンラッド」

「ご指名ありがとう」

ヨザックはそんなやり取りを見て、再度のため息。

「ヨザック、どうかしたの?」

「いいえ〜、なんでもないです」

ちょっと不機嫌さを装ってすねて見せたが、薫は首をかしげただけだった。

(隊長も自覚なさそうだけど、ありゃ相当お熱だな…。
しかも、当の本人もわかってなさそうだし。)

薫とコンラッドと、準備をしながら、

ヨザックはそんなことを考えていた。






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