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厨二病
転んじゃったって










「おいっ,おーい,大丈夫か?」
「……………ぐぅ」
「寝るなや。起きい。風邪引くで」
「あ…?」



まず目に付いたのは金髪だった
ぼんやりとした視界では,それが唯一はっきりしたものだった



「…トサカ…?」
「よーし放っといて行くでー」
「こら坊!
ちゃんと助けんと!」
「ええんや柔造そいつめちゃめちゃ元気やで」


うあー
がんがん響く
なんだ…ここ
あーなんだ
あの路地裏からちょっと行ったとこの公園か…


「なんだよ…お前ら」
「なんやこいつ!誰が運んだ思てるんや!」
「俺ですけどね」
「うあーちょっと叫ばないでくれ
頭殴られたんだよちくしょー」
「………なんや,恐喝かなんかされたんかいな」
「いや,俺がしたほう」


頭一発くらって財布一つなら採算があうってもんだ
あー…腹減った


「おーう,立派な不良坊主やなあ
坊,お仲間でっせ」
「しらんわ!」
「まーた,反抗期なんもわかりますが
そんなんやから正十字行くの反対されたんですよ」
「え,ええんや!奨学金やし!」

「………正十字」


視界がクリアになる
目の前には人が二人いた
一人は髪の毛黒で,年上
服装…なんだこれ,仏教?
もう一人は真ん中が金で,他が黒
……こいつもしかして,学生か?
制服着てるし
いやでも…うん,まあ高三ぐれーか?


「堪忍なあ,坊怒りっぽいねん
わいは柔造言います
よろしゅうなー」
「………燐,だけど」
「…勝呂や」
「こら坊,ちゃんと名前も言うてください」
「お前らやて下の名前だけやろが!」


あー…くそ
うっせーな
こいつ…この制服,雪男のと同じか…?
正十字の
うあー
まじかよ
あそこってやばいんじゃねーの


「そんで君?全然食ってないやろ?
なんか食わせよかー?」
「お前!せっかくの俺の休日をなんやと思てんねん!」
「まあまあ,柔造とは他でも会えるでしょう
魔障はやっぱり塾で受けてください」
「なんのために呼んだと…!!」


ましょう?
ましょう…魔性か?
魔性を塾で受ける…
なんだこいつ


「むっつりなのか」
「ちゃうわ!なんでや!つかお前はなんなんや!」
「だから燐だよ…くそ,めんどくせえ」
「なんやその態度は!」
「まーまー坊ー
はいはい,で,燐くん
ご飯行かへん?」


にぱー
と笑いかけてくる
……なんだこいつ


「行かねー」
「えーなんでや?」
「柔造!!」
「はいはい坊は黙ってくれや」


こいつら…
兄弟,なのか?
顔全然にてねえなあ…



「じゃあわかったわー
さいならやなー」
「……………おう」
「けっ!あほが!」


いらっとしたからぶっ叩いて逃げてやった
トサカが少し曲がった






































「「…………」」
「…………なんの用だよ」
「…お前こそ,なんでこの修道院に」
「なんやー変な縁ですわー」


親父たちが死んでから
修道院は修復されても,人は来なくなった
だから俺は毎日一番前の席で寝てる

だけど今日は


「いやー
案内してもらえば良かったですねー坊」
「いらん!」
「いやだって三時間もかかってここに着いたんですよ?」
「しらん!」
「ここからあの公園見えるんですねえ…」
「きか――――ん!!」
「うっせー!!」


さっきからなんなんだよ!


「お前らなに!?
何でここに来んだよ!」
「ほら,坊が大きい声だすから……


堪忍なあ燐くん
わいら,藤本さんの弔いしに来たんや」
「!」


こいつら…
じじぃと知り合いなのか…?
全然接点なさそーじゃねーかよ
(特にトサカのやつ)


「つっても挨拶だけしかできひんけど」
「…………お前は,なんなんや」


勝呂が言う
こいつ…
ふてぶてしいな







「………息子だよ」
「…はあ!?」


勝呂がさけぶ
なんなんだよ


「じゃあお前…聖騎士の息子っちゅーことにっ……!!」
「は?」
「わーあんひと子供いたんやー」
「ちょ,撫でんなっ!!」
「さみしかったろーほれほれ」
「ちょっぐしゃぐしゃにぃっ」


ぐしゃぐしゃぐしゃー


勝呂はぽかんとしていたが
それを誤魔化すように柔造が頭をぐしゃぐしゃにする




「(坊ー
どうやらこの子魔障も受けとらんようやし
これ以上つっこまんでやりましょう)」
「(…わかっとる)」
「(ほーですか)
ほれーほれほれー」
「ちょっ!やめ,ちょっ…くそ…」




ぐしゃぐしゃ
結構強い力だから,自然と下を向いてしまう

俺が今座っている長椅子と,
あいつらの足下が見える





あ,黒い靴だ
黒い,靴
なんでだろ
こいつ,坊さんみてーな格好してんのに,
靴だけふつーだ
変なやつだなー…

あー…
なんか
似てんなあ
親父の靴と



この
ぐしゃぐしゃぐしゃーって,するとことか,も
笑い方とか,も

なんか,似てるくねえ?



「ほれほれー燐くーん」



『がはははっ!髪の毛だけはきれーだなあ燐!』















「やめろよ!!!!!!」















ぱぁん,
と,手を払う
驚いている顔が見える


なんでそんなとこまで,ちょっと似てんだ





「なんだよ…
同情かよ
なんだよ…
やめろよっ
くそ,
帰れよ,ばかやろー………」





前が見れない
顔を上げられない
なんでだ

そうだ
今日,結局財布一個しか取ってない
だめだ
足りない
もっと,稼がないと






「燐君」
「…………なんだよ」
「君,自分が今どんな顔しとるかわかっとる?」
「………わかってるよ」
「わかってへんよ」
「わかってる!」
「わかってるなら!!!!」


ぼす,
と目の前が真っ暗になり,
額に堅い壁があたる


「それを見た人間が,どんな顔するか
わかってくれや」


真っ黒い服
勝呂は,制服
ああ,そっか
葬式とかって,黒い服が基本だよな
学生は,制服でくるよな
そうだよな












人が,死んだら
世界が黒に染まるんだ




















「っう,うえっ」
「!」
「ふえ,えぇぇっ,うっ
うぅう…あ」


ぎゅうう
涙を止めるように,力強く抱きしめられた
それとは反対に,あふれてきた

なんで
なんで死んじゃったんだ
なんのために死んだんだ
親父

おいていくなよ
つれていってよ
なんでだよ

親父

あんたはいつも,すっげえ良い笑顔で笑ってたのに


真っ黒なんかに,染まんなよ















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あきゅろす。
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