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じゅうきゅう。あのひと


あーコーヒー美味しい。


そんな事を思いながら店の入り口を無意識に見つめる。
彼女は、まだ現れなかった。


**

フランに押し付けられた任務は、
非常に厄介な物だった。

チフィアファミリーとの合併の交渉。

何でこんな任務が暗殺組織にくるんですか、とXANXUSさんに尋ねたら

「キレやすいからな。
奴らが交渉中にこっちに向かってくるというのも十分考えられる。」

要はボンゴレの外交官では危険だからお前らやってー、って話だそうで。


まあね。それは正しいと思う。
そういう奴らは力でねじ伏せるのが一番なんだろうから。

でも!?
それが私に来ちゃったんですけど!?

フランならともかく私に来ちゃったんですけど!?

ヴァリアー幹部さんなら適任だったけど
メイドさんの私に来ちゃったんですけど!?

向かって来られたらちょっとたちうち出来ないゾ☆


いや、ね。

銃っていうのはさ、多人数との戦いには向いてないんだよ。
銃口は一つしか無いからさ。

……まあXANX―どっかのボスさんの様に
そんなもん関係ねー、みたいなふざけた方々もいらっしゃいますが。


でもとりあえず
「私には無理っす」
ってXANWUSさんに言えば

「てめえが引き受けたんだ。俺は知らねえな」

と冷たく突き放され。

毎度の事ながら命の危機を感じて途方に暮れる


「――――えません…」
「は?」

「先生未来が見えません…」


すると私が余りにも困った顔をしていたのかXANWUSさんが

「…これ共同任務じゃねえか」

と教えてくれた。

**

今思えば、もちっと早く教えて欲しかった。

なんて贅沢か。
XANXUSさんがわざわざ教えてくれたんだ。

どちらかというとそこは感謝すべきかもしれない。


共同任務だと、教えてもらった後の安心感。
あれは素晴らしかったよ最高だったよ。

雨が止んで空がサーッと青く澄み渡る感じ?

絶望から希望へ
悲しみから喜びへ
闇から光へと
私を導いて下さった神様ありがとう!!

因みにココ聖書の引用ね。
テストに出ますよ。

フフフ、私博識だからさ。

「満千流、…痛い子みたいに見えるよ」

「へ、わ!クロームちゃん!!」

そう、任務のお相手はクロームちゃんだった。

ていうか痛い子って何で、と聞くとクロームちゃんは

「声…出てたから…」

と言いづらそうに返す。

だから何か店の人達に見られてるな、と思ったのか。

言ってましたかアレを。
何か最近慣れてきたけども


クロームちゃんがコーヒー片手に席に座る。

「この後の事だけど…」

「へ、あ、任務?」

「うん。一応確認するね」

か、可愛いよちくしょう。
なんかこうチマッとしててワタワタッとしてて

萌えるわ、全体的に。
なんか私変態みたいだけども。

いや、違うよ!?私は至って真面目な神崎満千流一般人。

さあ、上記の文章に所々間違いがあります。
どこでしょう!?

「―――から、満千流は…此処でこれを説明して」

「へ?」

「…あ、…聞いてなかった?」
「すいません」

「どこから?」

最初から、と答えるとクロームちゃんは
「次こんな事あったら、…怒るよ」

と可愛く脅してくれて。


殺気は死ぬ程痛かったけども。


**

「とりあえず私が合併についての説明係
クロームちゃんが彼等が暴れ出した時の対処係ね。

オールオッケー」


いや、全然オッケーじゃないけどね


クロームちゃんが対処係って凄まじく問題有りだけど
何オールオッケーとか言ってんの私って感じだけど

めちゃくちゃ殺気当てられてるから反抗する気も失せるんだ。

無力ー私。


はは、たくましく育ったなクロームよ

「行こう、満千流」

「へ、あれもうこんな時間」

店のドアへ向かうクロームちゃんに続いて私も席を立つ。

**

外はもうすっかり冬の色に染まっている。
道行く人も、暖かそうな格好をしている人が多い。

私の横でクロームちゃんが手に息をはあっと吐いていた。

「寒いね…満千流」

「…」

「満千流?」

「………さ、寒…い。ここ凍え、る。」

そう。
私は人間でありながら冬眠をするという希少種であるため、寒さに弱いのだ。

「…私は変温動物」

ぼそりと私が呟くとクロームちゃんはそれだけで全てを察して下さったようだ

「幻覚で…温めようか?」

や、優しいよ。可愛いよ。
泣けるよ号泣だよ。

ヴァリアーの某幹部達に見せてやりたいよ。


「ぜひお願いします。」
希望は灼熱の太陽の照りつける南の島で、と付け加えるのも忘れない。

するとクロームちゃんは

「分かった」
と言ってリングに火を灯した。

そして私は次の瞬間

天国と錯覚する程の美しい南の島へ――――


――――行く筈だったのに


何故かマグマの海の真ん中に行っていた。

詳しく言うとマグマの海の真ん中にポツンと一つ存在する孤島(1m×1m。想像を絶する狭さ)に行っていた。

「ぎゃああぁぁああ!!」

怖い怖い怖いよ!
ちょいちょいちょいクロームちゃん!?

Where is 南の島―――っ

私のオアシスどこ行ったああぁぁっ

いや確かに体は温まったけども!?
変な汗までかくくらい温まったけども!?

良く見れば頭上灼熱の太陽あるけども!?

きっと此処は南の島設定なんだろうけども!?

確かに私の意見反映されてるけども!?


でもおかしいだろおおぉぉおお!!


そう一通り叫び終わったと同時に幻覚が解けた。

かわゆいクロームちゃんと言えど、ここは心を鬼にして一喝せねば、とクロームちゃんを見れば

え、何で申し訳無さそうなんですか
こっちが申し訳無くなるんすけど


口をパクパクさせて固まった私にクロームちゃんは

「ご、ごめんなさい…満千流」

と泣きそうな声でそう言い。

それにつられて私は

「良い良い良い良い全然良いオールオッケーオールオッケー!!」
と笑顔全開でそう言い。

…何やってんだろ私。
情けな。

知ってたけど。


でも、まあいっか。

クロームちゃんが凄く嬉しそうに笑っているから。

こんなに素敵な笑顔が見れるなら、
何だっていいや。


彼女につられて私も自然と笑って。

友達って良いな、と漠然と思った。

**

いつの間にか芽生えた友情





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