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じゅうはち。どこ





今の私にはそれしか無い。

XANXUSさん等の居る書斎から脱出して早一時間。
城をさまよい続ける私は、ルッスさんに本気で心配された。
浮浪者に見えたらしい。

いつもは何をして暇を潰していたっけ。
いや、どちらかというと、此処に来て暇だと思った覚えが無い。

逆に休みたいと思った覚えはわんさかある。

どうして今日に限って暇なんだろう。

「だからといって幹部の皆さんとじゃれる気にもならないしなあ…」

そんな事を思っている内に一つ、重大な事を思い出した私はハッとする。

「私そういやメイドじゃん。」

そうだよ。
だから今まで暇だと思った事が無いんだ。

ていうか、私最近自分がメイドだって事忘れすぎじゃない?
今までも何回も有ったぞこのパターン。

どれだけメリサさんに迷惑を掛けた事か。

心なしかメリサさんのお顔が思い出せな―――いやいやいやいやそんな事無いよ?
誰、今そんな事言ったの。背後霊?

「満千流さんでしょー」

ぎゃあっ!?び、びっくりしたよ…
唐突に発せられたその声に心臓が縮みあがる。

しかしよくよく考えてみればこんな風に語尾を間延びさせる話し方をするのは私の知り合いの中で只一人しか居ない。

声の主が分かり、少しほっとしながら振り向くと、その光景に唖然とする。
そのせいでかろうじて出した声も随分間抜けな物になってしまった。

「…………ふらん?」

振り向いたのに、フランの姿が無い。

「平仮名で呼ぶとバカ丸出しですよー」

背後から声がしたから振り向いたのに、また背後から聞こえる声。

不思議に思いながらもまた振り向く

「あれ、フラン?」

「そういえばーさっき書斎言ったらゴジラが出たのかっていうぐらい荒れてたん
ですけどー」

あれれれれ、また背後から声。
くるっと振り向く。

「多分ゴジラがでたんだよ。
っていうかフランどこ?」

「ゴジラでもあんなに暴れますかねー」

また背後から。
何なんだ、といい加減面倒くさくなりながら振り向いたらふらり、とフラつく。

「おわっ危な…」
右足を出してなんとか踏み留まる。

「…えっとー…今何が起こったんですかねー
何も無いところでそんな事やっちゃってー」
痛いなーもう、と言いながらわざとらしく笑うカエル君。

また背後からの声だが、もう振り向くのが面倒くさいのでそのまま喋る。

「振り向いてー、振り向いてーってやってたら目回ってさ。」
開き直ってあははーと笑いながらそう返すと一瞬間を置いてフランが

「…尊敬しますー流石満千流さんって感じでー」
と言いやがった。

「流石かーそっかー
フランは無気力、無関心、無知、無能
って感じだよねー。」
言った後で、わ、無の4拍子、と感動していたら突如現れた火柱に囲まれた。

床に亀裂が走る。

「ちょ、わっ、ごめんごめんっ」

次第に崩れてゆく足場に焦りながら必死で謝罪する。

「本当にごめん、真面目にごめんって」

足場がほぼ、眼下に広がるマグマの海に呑まれていくのを絶望的な目で見ながら
そう言う。

閻魔様に呼ばれている様な気がする。
あ、嘘、神様。
地獄に墜ちるのは勘弁。

骸さんに会いそうで怖い。

崩れていく足場を何とか飛び移りながら未だ姿を現さないフランに謝る。
謝罪の対象がどこに居るか分からないのでやりにくい。

真逆の方向向いてやってたらそれこそ痛い子だ。

そんな事を思っていたら急に、足場の崩壊が止まる。

しかし復旧作業には移って頂けないようだ。
残念。こんちくしょー

今にも崩れそうな足場にしがみつきながらふと上を見上げると、シャンデリアに
捕まるフランの姿。

どうやらフランは幻覚で姿を隠して私で遊んだ後、あそこへ移動して幻覚を解い
たようだ。

フランは私が口を開く前に喋り出す
「助けてほしいですよねー?」

「…うん。」

「ならミーの言うこと聞けますねー?」

「…キャラ変更したの、フラン?
Sになってみた?」

「死にたいみたいですねー」
分かりましたーと爽やかに言うフランに本気の謝罪。

すると、ま良いんですけど、という返事が返ってきたのでほっとする。

「取りあえず頼れる満千流さんに一つお願いが」

「あれ、満千流さんて呼ばれてる。」
前満千流って呼びますーって言ってなかった?と続けると、そんな日も有りましたーと非常に遠い目をしながら返された。

まあ、良いや。
きっと尊敬されてるんだ。

そう思っていたら
「まさか。只呼びやすかっただけでー
何バカな事言ってんですかー」
とさも見下した様に言われた。

しかも奴、ぼそりとあ、元からかーとか言っている。

「聞こえてるわ!!っていうか心読むな!」

「心外だなー。満千流さんが勝手に喋ってたのにー。」

「あー、やっぱそういうパターン…」

うん。まあ分かってたけども。

「すいませーんそれよりお願いが有るんですってー」

「何か最初の勢いはどこいった、みたいな」

早くもSキャラ設定無視か、そう言うと足場が少し崩れた。
慌てて謝る。やっぱり沸点低い。

「で、お願いとは何だね。フム」

「…誰ですかー。ミー反応しずらいんですけど…」

「ムフフフフフ」

「あ、頼みたいのはですねー」

私がせっかくノリ良く返したのにフランはそれを受け流しやがった。

おかげで私が滑るハメになった
野郎、なかなかやりやがるぜ

って私誰だよ

「まあ良いや。頼みたいのは?」

「はいー。実は任務を一つ変わって頂きたいなーと」

「…は?」

…何。今何て言ったこのカエル君!?

任務って言った?
「やだよ!こないだ任務押しつけられて酷い目にあったんだから!!」

XANXUSさんには言えなかったこの言葉もフランになら気兼ねなく言える。

しかしフランは動じる事も無く
「そんな事言わずにー。ミーを助けると思ってー」

とひょうひょうと言う。
しかも足場を崩してきやがる。

しかし、もしもこの間のような事が起こったら。
そう考えるとYESと言う気なんて一瞬で塵と化す。

「嫌な物は嫌。何されたって一緒ーっ。」

まさかフランでも私を幻覚で殺す、まではやらないだ「次拒否したら殺すんでー


聞き慣れているはずの抑揚の無いその声に背中がゾクリとする。

ふざけているイメージしか無いヴァリアー幹部。
しかし彼等の時折見せる本当の姿に私はいつも感動する。

こんなに凄い人と私は一緒に居るのだ、と。


フランから発せられる何かに圧されて私は無意識にこくこくと頷く。

それを見てフランは「それで良いんですー」と言いながら一枚の紙を投げてきた


足場が知らぬ間に元に戻っている。
否、元から足場など崩れていなかった。戻ったのは、私の感覚。

先程の幻覚の影響だろうか、少しフラつく体を支えながらフランの投げた紙を拾
う。

「任務の書類かよー…ラブレターかと思ったのに」

「いやーどう考えても無いでしょー。」
私の呟きにフランはそう返す。

そして、「でも変わって頂いてくれて有り難いですー。」

と素直にそう続けた。

こうも態度がコロコロ変わると調子狂うなあ。

「……何でこの任務嫌なの?」

「ミーにも色々あってー」

なんだそれ。
何一つ答えてないよ。

別に良いんだけどね


気を取り直してフランに、ていうかさ、と話し掛ける。
「私はパシられただけな様な気がするのは気のせいだよね。」

「………勿論ですよー」

何だ何だその歯切れの悪さ。まるで肯定してるみたいじゃん。
そう言おうと私が口を開く――その一瞬前にカエル君は「じゃー」と言って消え
た。

じゃー、ってなんだ、じゃーって。

そんな事を思いつつフランに貰った資料を見る。


さあ、今度は一体どんな厄介事が舞い込んでくるのだろう。


******

フランとの話は一番書きやすいです。
愛の力かな。


………嘘です。


読んで頂いて嬉しいです。
有難うございました。


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あきゅろす。
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