じゅうなな。さすが
私はある扉の前で湧き上がる恨みを抑えこんでいる。
何故なら黒く塗られ、重苦しい程の覚悟を漂わせる私の心が、
前に立つだけで冷静さを失う程の重圧を、それは醸し出しているからだ。
しかし、堪えなければならない。
私には、使命があるのだ。
この扉の向こうに居る奴に、新たな敵に、伝えなければならぬ事がある。
使命を全うするまで私は死ぬ訳にはいかないんだ!
大きく息を吐いて勢い良く扉を開く
「ふざけないで下さいいぃ「かっ消えろカスが」
奴、XANXUSさんの手がなんとも明るく光り出す。
これは私の終わりと直結するため心の底から、誠心誠意謝った。
…私最近こういう形で謝るパターン多くないか?
そう思ったのも束の間、XANXUSさんが口を開く。
「何しにきた。」
「あ、と、………あの…取りあえず怖くて喋れないんで…さ、殺気当てるの止めて下さい。」
「喋ってるじゃねえか」
「東洋の神秘です。」
この後「カスが、喧嘩売ってんのか」と言われた後、三途の川を見るという初経験をした事は忘れる事にしよう。
そんな事を思いながらふとXANXUSさんから視線を外すと
「あ、スクアーロさん」
「…う゛お゛おぃ、まさか今気づいたとは言わねえよなぁ?」
「……」
「何で黙るんだ、てめえは」
否定しろぉ、と言われるが嘘は付かない主義なんで、と答えたらドカッとゲンコツが降ってきた。
「いったぁっ!
ちょ、ふざけないで下さいよ。乙女をグーで殴るのは男として終わってます!!」
「乙女だぁ?誰が。つーかてめえに男語られても響かねえんでなぁ。」
まあ、泣くなぁ、と言いかけたスクアーロさんだがそれは叶わなかった。
言い終わる前に彼の後頭部にワインの瓶が叩きつけられたからだ。
勿論犯人はXANXUSさん。
「何しやがんだぁこのクソボスがぁ!!」
瓶で殴られた直後であるのに綺麗な銀髪からワインを滴らせ元気に叫びだしたスクアーロさんにギョッとしながらも私は戦乱を避けるべく部屋の隅に動く。
この時の私の反応速度と素早さは後世に残る大記録だったろう。
そんな事を思いながら頬杖をついて彼等を観察する。
二人共流石に武器こそ出さないものの、攻めては守り、守っては攻め、の見事な攻防戦を繰り広げていた。
いやあ、凄いなあ。
流石ボンゴレ独立暗殺部隊ヴァリアー。
戦闘センスはピカイチだ。
羨ましいなあ。
ぼんやりそんな事を思いながらその戦いを見学する。
それにしても、あの戦いに巻き込まれなくて良かった。
そんな事になってたら間違いなく一番に私はお陀仏していただろう。
いやあ私、なんというラッキーパーソン。
というか、と思考を一瞬で別の所へ持っていく。
(この辺切り替え早いのは私の素晴らしい所だよね。…え、単純なだけ?)
私XANXUSさんに文句言いにきたんだけどな。
この間の、任務のさ。
骸さんの所に行った帰り、山で遭難しかけたアレ、ね。
人員不足だろうが何だろうが、もう二度と私に任務を押しつけるな、って。
そう言いにきた。
だけど、と思い直す。
目の前の光景を見ていると、それがどれほど命知らずな行動かよく分かったからだ。
それから再確認した事も一つ。
ヴァリアーの方々の沸点はマイナスの域に達しているという事。
これから無駄にコメントすんの控えよ。
取りあえず、と足に力を込めながらこう思う。
早く此処を去ろう。
XANXUSさんに言う事が無くなった以上私が此処に居る必要は無い。
こんな戦いが繰り広げられている所になんか。
…事の発端は私だった気がしないでも無いが……気にしない。
私はレヴィさんを誤魔化す時に見せた差し入れを部屋のテーブルにこっそり置いて音を立てぬよう部屋を出た。
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出番があまり無かったスクアーロさん。
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