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じゅうに。いんぱくと

そこにいたのは―――

「…さっきのお兄さん」
そう呟いた私の声は

「お帰りなさい、骸さん」
と言った千種の声と重なる。

―ん?

え、待って待って。
今千種何て言った?

名前呼んでたよね。
あのお兄さんの。

何て?
「骸さ―ん、お帰りなさい、お疲れ様れーす。」

…アレレ?

私は小声で「千種、千種」と呼ぶ。
面倒くさそうに振り向いた千種に

「骸さんって、これだよね?」
と写真を指差す。

「そう。これじゃないけど。」

「え、じゃああれは?」

「骸様。あれじゃないけど。」

アレレアレアレ。
骸さん……え?

「写真の彼が骸さんで、…お兄さんも…骸さん?」

ん?
同姓同名?

私の頭がパニック状態に陥りはじめた、その時

「骸様、…その子に説明してあげて下さい…。」

という、細く、しかしはっきりとした意思を含む言葉が骸にかけられた。

救いの女神は誰だ!!と顔をあげると目の大きな女の子。多分同年代。

髪型が写真の骸さんのナッポーヘアにそっくりなのは、気にしない。

私の視線に気づいたその女の子は私にむかって

「…私はクローム。あなたは?」

と問いかけてきた。

「満千流、ですっ」

「満千流…よろしくね」
「ここここちらこそ!」

ああ、良い子だよ
此処に来て初めての常識人だよ

髪型ナッポーだけど。

…でも他の人と比べたらウン百倍まともだよ、きっと!

「クフフ、満千流、とても失礼な事を考えていませんか?」

「え゛…、いいいえいえ、まままさか、そ、そんな。

…ていうか、あなたは結局、骸さんなんですか?」

「ああ、それはこういう事ですよ。」

そう骸さんが言った途端、骸さんがサラサラと砂になる。
否、骸さんを覆っていた物が砂になったのだ。

まるで彼の仮面が剥がれ落ちるかのように。

「え…あ、幻覚…」

そういうことか。なる程。

全然分からなかった。


そして砂の中から写真の骸さんが現れる。

「クフフ、どうで「あ、本人確認できたんで、書類受け取って下さい。」

誰に渡すか指定された書類を他者に渡す訳にはいかなかったので此処に留まって
いたが、
本人が出てきたのだ。

ならば早いとここんな得体の知れない場所とはおさらばしたい。

そう思って骸さんに書類を持たせて、失礼しましたー、と帰ろうとしたらすれ違
いざまにガシッと腕を掴まれた。

「え、いや…あの…」

「折角来たんです。少しぐらい喋って場を盛り上げていくのが礼儀ではありませ
んか?」

――いやいやいや!?
聞いたことないよ、そんな礼儀!

厳かに帰った方が良くない!?
全然厳かじゃないけども!


そう目で訴える私。

勿論相手にされなかった。

**

「そう言えば骸さんていくつですか?」

「いくつに見えます?」

只今(無理やり)ソファに座らされて、仲良く骸さんと対談しております。

…楽しくないよ―――…

得体の知れない重圧が私に重くのしかかっているようだ。

「え…同い年かな?」

「ではそう言う事でいいですよ」
僕は寛大ですから、と言う某ナッポー。

いいですよっておかしいだろ。
寛大とか関係無くね?

「いや、実年齢を…」

「満千流はいくつですか?」

「あ、私の「因みに僕は教えませんが。」

――んだと!?
あれか。アンタもフランと同じタイプか。

あの時とほぼ同じ会話だよこれ。
教えない理由が分からないよ。

とても此処から去りたい衝動に駆られるが、それは彼から発せられるどす黒いオーラによって押しつぶされる。

「…し、将来の夢は?」

会話を続ける為に出した私の苦し紛れのこの質問に彼は少し考えてから

「世界征服、ですかね」
と答えた。

「え、何すかその小五みたいな答え。」

「せめて中二と言って頂きたいですね。」

「いや、大して変わらないんですけど」

「ああ、雨が降ってきましたね」

「なんであなたはそんなに平然としてるのかな。」

「まあつまりは夢は無駄にでっかい方が良いって事です。」

「さっきから微妙に話噛み合ってないのには気づいてるかな!?」

「それにしてもこの書類…燃やしてしまいたい。」


…駄目だ。全くキャッチボールができない。
千種より酷いぞ、コレ。

そう思いつつ、骸さんの言葉が気になる私は問いかける。
「その書類って、任務の依頼ですか?」

私の言葉に骸さんは一度書類に向けた視線を私に戻す。

「ええ…まあそうですね。しかし何故僕がヴァリアーからの任務を受けなければ
ならないのか」
分かりかねます、と非常に面倒くさそうに言う骸さん。

骸さんにそんな表情をさせる任務。
一体どんな任務なのだろう。

そう聞いたら、流石にそれは満千流にも教える事は出来ませんね、と言われ
た。

まあ、そうでしょうけど。


その時骸さんの携帯の着信音が室内に響いた。

骸さんはちょっと失礼、と言って席を立ち
それから暫くして帰ってきた。

「待たせて申し訳ないです。」

「いえいえ、任務ですか?」

「そのようです。本部に行かなければなりません。

…そんなガッツポーズしなくても良いじゃないですか。」

え、だって帰れるんだもん。
よっしゃー!

「笑顔全開で手振らないで下さいよ。」

だって早く行っちゃってほしいもん。
てわけでばいばーい。

「…ま…いいですよ。
帰ってきたら、また会いましょう…。」

失礼します、と骸さんは渋々、といった感じで部屋を出て行った。

******

骸さんには少しずれていてほしい…←

お読みいただき有り難うございました。




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