[携帯モード] [URL送信]
いち。はじめまして



「お前は何者だあ!!」



何者だ!!って、君達こそ何者なんだい!!
てゆ―か何よりも前にアタシは一般人だああぁぁああっ

いや、訂正。
一般人、じゃ無いけど。

でも私は普通の善良な市民ですよ!!
怪しくなんかないですよ!!

そんな事を考えながら
私は襲いかかってくる黒服の人達を銃で撃ち抜く。


急所外してるから問題ないよ。


なーんて言えたら恰好良いんだけどね。
そこまでのレベルではございません。

すいませんね。
あ、でもコレ正当防衛に含まれるかな。


そんな事を考えつつも、私は銃を片手に木々を飛び回り

漸く追ってくる人を上手く蹴散らすことに成功、木々の茂みに身を潜める事が出来た。


あぁ疲れた。
木の幹にもたれながら銃をしまう。


木々の間から見える抜けるような青い空。
それを見ていたら、ついうとうとまどろんでしまう。


ああ、いけない。
状況を説明しなくちゃいけなかった。



私はイタリアに留学中の日本人神崎満千流。


そんな私が一人自宅のベッドで寝ころびながら
無心になりたい、なんて事を思い立ったのはほんの二時間前。

イタリアの街を徘徊して、どうしようもなく惹かれる物を感じた人気の無い森に入ってみた私は

森の奥へ奥へと歩を進めた。


森に入ってしばらく。
斜面続きの地面が急に平地になった。

ああ昼寝にうってつけ。来てよかった。

額の汗を拭いながら日の当たりのよさそうな所に寝ころぶ。



――――すると



急に黒服の人達が出てきて

「侵入者かあ!!」
と叫んびながら私に向かってきた。

だから必然的に私は応戦しなければならない状況になり、銃を取り出して


――それから始まった攻防戦。


その上ふと周りを見渡すと、同じような人達が大量に私を取り囲んでいる。

ヤバい、と思いつつもやるしかない、と銃を構えた。


彼らは私が此処にいる理由を説明させてもくれなかったし
殺気は滅茶苦茶に当てられていたし。


こりゃダメだ、と思った訳で。


実際には私戦うのは好きだし、彼らもそこまで強く無さそうに見えたから
やり合っても勝てる、とかなめた事思ったのも事実ですが。


戦いにも、慣れてきたら心に余裕が出来、半分楽しみながら戦っていた。

けれど彼らは戦ってみて知る真実。
正真正銘の雑魚だった。

その上決して笑えない数。

というよりドンドン増えている。


一向に減らない敵に嫌気がさし、
次第に私は戦うのが面倒くさくなっていった。

ならば、と単純に逃げる事にして。


今に至る。


「は―。どうしようかなあ。」
木々の茂みに実を潜めながら私は一人溜息を吐いた

出て行ったら見つかるだろう
でも、かといって此処で大人しくするのも釈だ。

そんな事をあれこれ考えていたら私の頭に一つ、疑問が浮かんだ。

「あれ、そういや侵入者ってどういう事?」

よく考えれば、おかしい。
私は今、どこかに侵入しているという事だろうか。

でも、こんな人気の無い森に入ってはいけない場所があるとは思えない。


…でも侵入者って言われた。

という事は、此処には何かが有るんだ。

金塊か?
邪馬台国か?
イースター島――はイタリアじゃないや。
それとも温泉――はどこでもあるか。


けれど、何かがある。

私の中にムクムクと好奇心が沸き上がる。


何が有るんだろう。
知りたい。


すると急に
「おい!!そっちには居ないのか!?」
というあの黒服の声がした。

やば。
そう思い私は体を小さくして木々の間から様子を伺う。

「居ません!」
「こっちにも居ません!」

「くそ…っ。逃げられたか。
城に帰るぞ。レヴィ様に報告せねば!」
「はい!」

簡潔にやりとりを済ませて彼らが漸く撤退していく。

私はその後を急いで追った。


何故かって?
だって彼らは今から侵入が許されない何かの所へ戻る訳でしょ?


なら、付いていくしかないじゃないかーーーい!!



木々の間をを飛ぶように移動する彼らに見つからないように私はワクワクしつつも慎重に尾行を開始した。


速さにはそこそこの自信があるから彼らには容易に付いていける。

でも、私尾行って苦手なんだよねぇ。
コソコソするのが嫌、っていう性格上向いてないの。

今は好奇心がバッチリ勝っているけど。


しばらく進んだ所で、ダンッという音と共に彼らが急停止した。

かなりのスピードを出す彼らに付いていった私も木の枝から落ちそうになりながらも何とか止まる。


あっぶなーコレ落ちたらどうなるかな、何て呑気に考えながら何となく前を見た。


え。


あ、お、お、お城。
お、お城が、ある。


どういう事?

いや、確かに此処はイタリアだから、日本に居るよりは巡り会いやすい光景なのかもしれないよ?


…でも、やっぱりおかしいよね?

あの黒服の人達はこの城を守ってた訳だ。
侵入されたら困る、この城を。

という事はこの城には何かがあると考えるのが普通だよね?


…とりあえずまだ様子を見よう。


そう思った私は不安定な木の枝から音を立てないように降りる。
茂みの隙間から城の様子を伺った。


黒服の人達の一番前でヒゲの長いゴツめの男の人が何か喋っている。

しかし、背中に何を背負っているんだろう、と思いそこにばかり気を取られていた私は、


後ろに人が立っている事に全く気付かなかった。


だからその人が
「しししっ」
という独特な笑い声を上げて初めてその人の存在に気付いたのだ。

「ぎゃっ!?」

という色気の欠片も無い声を出しながら私はバッと後ろに振り向いた。

「ししっ、色気のねー声。」

ソレ、今私も思った、とか考えながらも私の心臓はバクバクだった。



見つかった。ヤバい。



…ていうか、誰?

こんな状況の中呑気にその人を観察してみる。

ボーダーのTシャツに細身のパンツ。
金髪の髪の上には、何故か―――

―――ティアラ?
何でまた。

というか、何よりも前髪長い!!

そう思った私は彼に素朴な疑問をぶつけてみた。

「…見えてます?」

彼は一瞬何の事か分からないという素振りを見せたが、
直ぐにああ、と理解して


「見えてるに決まってんじゃん。
だってオレ、王子だもん。」

という意味の分からない説明をくれた。
ていうかさ、と彼は続ける。

「お前ここで何やってるわけ?」
と聞いてきた。

あう、痛いトコきたね…。
そこが一番聞かないで欲しい所だったのに。


何と答えるか。


まさか馬鹿正直にこの城が何なのか調べてみようと思って、なんて言えない。

どうしよう。
何か喋らなきゃ。


「あ、っと…こ、このお城で働いてみたいな―何て思ったり思わなかったりやっぱり思ったり…。」

く、苦しい…。
ていうか、言ってる事おかしい…。

しかし彼は
「あー、メイド志望?ならちょっと付いて来いよ。」

と、勝手に解釈してくれた。

しかも城の中に入れてくれるようだ。


ラッキー
そう呑気に思いこっそりとガッツポーズ。


そんな私が連れて来られたのはお城のある一室の前。


そこで彼は「メイド志望の奴来たぜ―。」と叫んで
じゃ、後はやってくれるから、と言ってさっさとこの場を去っていく。


私は彼が長い廊下から見えなくなる直前にお礼を言っていない事を思い出し

「ありがとうごさいました!!」

と頭を下げた。


彼の方を見るとこっちも見ずにヒラヒラッと手を振って、廊下を曲がっていく所だった。


いやー良い人だった、…と思う。


ボケーッとそんな事を考える。



すると突然目の前の部屋のドアが開いた。

どんな人が出てくるのだろう。

巨体の女の人だったらどうしよう。
もしくはロリロリのお姉さん。

この2人が出てきたら困る。
多分絡めない。


しかし、
そんな私の考えはアッサリ裏切って頂けた。


ドアから出てきたのは小柄で優しそうなおばあさん。


あーホッとした。


「あんたが此処で働いてくれる子かい?」

「は、はいっ。」

「そうかい。

私は此処のメイド長のメリサだよ。
よろしくね。

いやー、それにしても、助かるよ。
なんせ人手不足でねえ。

みーんな幹部の方々に殺されちまうのさ。」

「はい………ってえぇぇえ!?」

いきなりのメリサさんの問題発言に私は大きな声を上げてしまった。


「こ、殺される…。」


「そうなんだよ。

だからあんたみたいな若くて元気な子は即戦力になるから本当に有り難いんだ。

此処に来てくれて本当に有難うね。」

そう言って嬉しそうに笑うメリサさん。

え、いや、そんな期待に満ちた目で見ないで下さい…。


ところで、とおばあさんは続ける。

「あんた何でこんな所で働こうと思ったんだい?」


…あ。

そういえば、私別にメイドになるために此処に来たんじゃないんだった。

このお城が何かを調べに来たんだよ。


…わ、忘れてた。


どうしよう。

メリサさん本当に嬉しそうに笑ってるし。
今更やりません、何て言えない…。


「えっと…、此処に来た理由は、ですね。

私メイドになりたくて。

小さい頃からの夢だったんですね。

それで、そろそろ一人前とは言えなくとも
それなりの事ならこなせる年齢にになったので、

いま働く所を探してまして。

此処を選んだ理由はですね、
どうせやるなら過酷な条件の下で一生懸命働きたいと思いまして。

それで、此処に来ました。」


うわあ、何ナチュラルに語ってんの私。

…よくそんなペラペラ喋るよね。


いや、私なんだけどさ。


焦る私とは対称的に、メリサさんは更に嬉しそうにこう言った。


「そうなのかい。じゃあ来たばかりで悪いんだけれど早速仕事を頼んでいいかねぇ。

…あら、その前に大事な事を忘れていたよ。」

「…と、言うと…?」

「ユニフォームだよ。此処のメイドが着る、ね。」

「…えっと―、それは俗に言うメイド服じゃあ、ないです、よね…?」


あー、もう此処まで来たら引き下がれないよー…。


「そんな野暮なもんじゃないよ。
まあ、付いておいで。」


そう言って歩き出したメリサさんに連れられて着いたのは更衣室。


その中には沢山のロッカーがあった。

メリサさんはそのロッカーの一つから“ユニフォーム”を出してきて

「新しいのは今無くてねえ。とりあえず暫くはこれを着てくれるかい?

多分サイズは合うと思うんだけど」


ほい、と私に服を渡さす。

メリサさんは着たら早速中庭の花壇の水やりをしておくれ、と言って出ていった。


ふー。

一人になって漸く緊張が解ける。


さて着るか。

そう思った私はバッと服を広げて



…立ち尽くした。



え、何この服?
いや、おかしいでしょ?
何でメリサさんと、違うのよ?


メリサさんの服は、品のあるオリジナルTシャツに膝下のスカート。

シンプルbutカジュアルみたいなイメージ。
でも、私が今渡されたのは
メリサさんのTシャツがロリロリになってスカートが、ホント短い

とりあえず有り得ないイメージ。



――――着れるかあぁぁああ!!!!



と叫んで私は壁に服を投げつける


――事が出来たらいいのに。


あー、もー。

というか、私ホントにメイドになるの?

何ですかこの急展開。
ほんとに笑えないって。


……でも、メリサさんの嬉しそうな笑顔見たとき
凄く嬉しかった。

心がポカポカと温まっていく、なんてありきたりな表現は使いたくないけれど、本当にそんな感じで。


全てが、満たされるようだった。


私の過去は本当にドロドロで。

こういう普通な世界が凄く新鮮。

私が人を笑わせた、なんていつ以来だろう。


それだけここは、私にとって居心地が良いのだろうか?


……。


………やるか。



…べ、別にやりたいわけじゃないよ!?


でも、メリサさんの笑顔、また見たい、し。

私が逃げたらメリサさんガッカリするだろうし。


此処、楽しそう…だし。


―よしっ
やってやるぞ。

殺されるとか言われたけど、私だって只の一般女子じゃないし!!


がんばってみせる!!

我ながらなんて単純なんだろう、と思うけど
でも不思議

嫌な気分が全然しないの。


**


あー、始まりましたー長編←

ヴァリアーの面々が殆ど出てきませんでしたが…(汗
次は出すぞーーーっ、と心に決めております。

此処まで読んで下さった満千流様、有り難うございました。


[#next]

1/24ページ

[戻る]


あきゅろす。
無料HPエムペ!