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屋根裏部屋
Schemer1


「んっ……んあ……。」

――ここは家の中じゃないのに。

アキはそんなことを思いながら、それでも甘くくぐもった声を抑えることができなかった。
視覚以外の五感すべてが、彼を敏感に感じ取っているのだ。
目を閉じた彼女の唇を覆うのは、この世にただ、ひとりだけ。その唯一の彼は今、至福のときを味わっている。
白い頬の弾力、それ以上に柔らかな唇。彼女自身の発する甘い香り、自分と同じシャンプーの匂い。可愛らしい、甘ったるく軽い声。そして、何よりも極上の、彼女の味。
彼はそのどれもに独占欲を満たされ、まさにこれ以上ない幸せをかみしめていた。


夜、久しぶりのデートで帰りの車中。
アキは今日一日のデートプランをこの上なく気に入ったらしく、珍しく饒舌に色んなことを話していた。
となりでステアリングを操っている千裕も、その話を至極緩みきった表情で聞いていた…はずだったのだが。

――なぜこんなことになっているのか。

アキはどこまでも深くなっていくキスに独特の浮力感を感じながら、ぼんやり思った。
自分は断じて、さっきまでの会話の中で彼を誘い立てるようなことは言っていない。仮にそうでないとしても、こんなのって。

彼女は事の次第に全く検討がつかない。さっきまで本当に、当たり障りのない話をしていただけだったのに。

――突然会話を揉み消す雰囲気を出して、急に真剣な目をして、千裕はわたしに覆い被さってきたのだ。ほんとに何の、前触れも無く。



BacK:NexT

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あきゅろす。
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