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10000HIT企画小説
HOLY AND BRIGHT(7)

「…………」
 幸村は、政宗の静かに向けられた隻眼を、黙って見つめ返してきた。
 幸村の心の内へと鋭く入り込めとばかりに、政宗は幸村を強い眼差しで見つめ続ける。
 幸村は元々多弁ではない。理屈をどうのこうのと並べ立てるよりも、相手の想いを本能的に――言わば、肌で感じ取って、感覚的に理解する質だ。
 焦燥や懊悩を吐き出させ、混乱を除けば、健全な心は自ずと己の指標を取り戻す。
 覆われた瞳は見えずとも、双眸の輝きが政宗には見える気がした。
「――……」
 政宗の視先を合わせながら、幸村はゆっくりと篭もった息を音をたてて吐き出した。
 そして、吐き尽くす時に静かに瞼を下ろす。
 しかし、視先は変わらず結びついているかのように、政宗は目を反らそうとしなかった。
 閉ざされた隻眼。布に覆われた向こうの瞳。見えるものが全てではない、と己は誰よりも知っている。
 幸村との繋がりは運命や宿命といった魂の次元での結び付きだと思っていた。この戦国の世で出逢うべくして出逢った半身。己はRealistだと思っていたが実はRomanticistだったのかもしれない――だが、それをただの夢想で完結させるには、己も、そして幸村も、互いに抱く感情は深くそして生々しい。
 ――互いに、互いを己の絶対として、そして相手のの命を奪うのは己だと決めている。
 だからこそ、幸村は己を刃から庇い、自らに傷を負った。
(馬鹿野郎)
 それでもし幸村が死にでもしたら、己はどうしたらいい。
 癒える傷で済んだのは僥倖だとしか言えなかった。
 だが、きっと幸村には微塵の躊躇いも、そして今、後悔もないだろう。
 真っ直ぐで迷いがない――それは心を映した眼差しも同じで。
 政宗に向けて、ゆっくりと開かれる瞳には、閉ざされる前にあった惑いは取り除かれて、元々の強い輝きが宿っていた。
(ああ)
 そうだ、この目だ。
 戦場で、彼の手から繰り出される槍の切っ先よりも鋭く、そして眩く己を貫くこの眼差し。
 しかし、常ならば二つのその輝ける宝玉は、今は片方が布で被され隠されている。
 政宗はそれを惜しいと思いながら、同時にずきりと胸が痛むのを感じた。
 ――幸村の傷は本来政宗が負うべきものだった。
 隻眼故、政宗にはどうしても死角が多い。それを狙った一撃を躱しきれないと悟るのは己よりも幸村の方が早かった――それ故の負傷。
 幸村が己よりも長けているという単眼視など、結局のところは己一人を守るだけにも足りぬ力だ。
 負い目として焦らねばならぬのは、本来己の方。
(――守られているのは)
 己だ。
 それを目の当たりにした政宗は、辛酸をなめたかのように顔を歪めてしまった。
「……政宗殿」
 小さく幸村が呼びかける。
 同時に、ふっと浮かべた微笑みは柔らかく、目元が幾分緩んで眼差しには優しげな光がゆらりと浮かんでいた。
「某を、どうか見てくだされ」
 言いながら、幸村は後頭部に片手を向け、小さく動かした。
「おい」
 何をしようとしているのかを察した政宗はそれを慌てて止めようとする――だがそれよりも、幸村の指先が結わえた晒しを解く方が早かった。
 ぱさり、と乾いた音と共に幸村の目を覆っていた布が床に力なく落ちる。
「……っ」
 露わになった幸村の傷に、政宗は息を詰めた。

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あいかわらずもぐだぐだともだもだとしています……

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あきゅろす。
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