10.08.12〜
ぴん、とあぶくのような何かが目の前ではじけた様な感覚に、はっとして外を見る。
あるのは、見慣れたただの庭。人の気配も家人のそれで、別段変わったところはない。
しかし。
何かが変わった。どこかが変わった。
(なんだ)
今まで頭の中を占めていた治水工事の云々も、これから考えなければならない地方領主の掌握もfilterがかかったかのように意識は向かず、ただただ、視線の先にあるはずの何かを探ろうと神経が集中する。
まさむねさま、と聞こえてくる声。それが小十郎の声だと、いさめようとした声音だと、それは判るのに。
今の自分を支配する、どこか遠くからする、これはーー。
(ああ、そうか)
庭の向こう、その先の山のその向こう。
さらに離れた国境の向こうから。
(来るのか)
相も変わらず、ほとばしるかのような鮮烈なEnergyを放って一直線に駆ける紅色の騎影が目裏に鮮やかに浮かぶ。
今頃はどこを駆けているのか。山中か。川辺か。村中か。
しかし一歩一歩と確実に近づいて来るその熱に思わず唇が笑む。
「政宗様?」
「とっとと片付けるぞ、小十郎。Harry up」
積み上がった書類に手を伸ばす。
逢瀬の時は幾許もないはずだから、少しでもともに過ごせるように。
突然熱心に働き出した様に小十郎があからさまに首を傾げているが、構うものか。
厭味の押収一つのその時間すら今は惜しい。
さあ、仕事など早く片付けてしまおう。
だが、疎かにするつもりはない。
己の決定は民の暮らしを左右するのだから。
あのまっすぐな目に向き合ったときに己の内に恥じることがないように。
近づいて来る。己の紅が近づいて来る。
沸き立つ胸のうちを抑えて書類にゆっくり花押を押した。
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これで幸村来なかったら筆頭はマジで凹むんだろうな…
小十郎は仕事片付いて喜んでそうですが(笑)
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