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<3−1>
 やたら強気な家老衆に捕獲され、一日執務に缶詰になった時、幸村は小十郎と畑仕事をしていたそうだ。
「畑仕事というのは良い鍛錬になるものですな!」
「鍬は重さもあるしな。まっすぐに振り下ろさねえと上手く土に食いついてくれやしねえ」
「土相手に真剣勝負を挑んでいるわけですな!」
「上手いこと言うじゃねえか。それにしても真田、おまえ、いい筋してるぜ」
「誠にござるか!」
「…………」
「………………」
 なんなんだ、この盛り上がりは。
 ため息を漏らすと、同じようにため息をつく忍がそこに一人。
「ホント、旦那ってば単純だから褒められたらすぐに懐いちゃうんだから……」
 がりがり、と頭を掻く忍は頭痛がするとでもいうように渋面を作っている。己の視線を感じたのか、こちらを向いた忍は、さらに深く深くため息をついてみせた。
「団子あげるって言われたら、その人は良い人だとか真剣に言っちゃうんだから。もう元服も済ませた立派な大人なのに……」
「…………」
 なんと応えればいいのか判らず、とりあえず「大変だな」とだけ返した。
 忍は、まったくだよ、と真顔で頷く。そして、ふと目を瞬くと首を傾げて見せた。
「どうしたの、独眼竜の旦那。なんだかご機嫌ナナメ?」
「Ha? 別に?」
「いやー、またまた。いつもよりも目がきついし? 口だって端っこ下がって、ほら、ご機嫌悪そう〜」
「……てめえがそういうふうに観察してやがるからだろ」
「なに、うちの旦那に右目の旦那取られてるからー?」
 それとも、と声を潜めて、忍は顔を寄せる。
 にやん、と人を食った笑みを浮かべて。
「……うちの旦那が、右目の旦那に懐いてるから?」
「……、……」
「あっは、すっげ顔―!」
 目じりがひくりと一瞬ひきつったのを、忍は見逃さない。
 それを大げさに囃し立てると、その声を聞きつけた幸村と小十郎がこちらを振り向いた。
「政宗様?」
「なんだ、佐助。楽しそうではないか」
「んー、そちらほどじゃないよー?」
 にまにまと笑う忍はさっきまでとは打って変わって機嫌よさそうに笑って、二人にひらひらと手を振ってみせる。
 わずかに首を傾げながらも二人が再び畑仕事についての話題に戻ったのを見て、くるりとこちらへ向いた忍は片手を口元に立てて顔を寄せる。
「うちの旦那は単純だからね?」
 腐っていた自分にこそりと耳打ちする忍の一言。
「…………」
(そうか)
 ならば、少し趣向を凝らせてやろうじゃないか。


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短くてごめんなさい……!
とりあえず書けただけでもアップを…!
ちなみにこれ、下書きの時は、たったの5行でした(笑)

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あきゅろす。
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