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※捏造梵×弁


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 気がつけば、寝床に寝かされていた。
 顔には再び晒しが巻かれている。
 右目に手を伸ばそうと、掻い巻きから腕を出すと、傍らで深いため息がした。
「本当に、無茶をなさる……」
 小十郎だった。
 あまりよくない顔色で、苦く呟く。
「本当になさるとは……」
 自分たちの様子がおかしいと気づいた小十郎は、あの直後に部屋に入り、素早く医師を手配し、処置したらしい。
「弁丸は」
 枕元の傍らは、弁丸の定位置だ。
 左目を巡らしても、気配を探っても、あの騒々しくも明るい気配がない。
 小十郎は淡々と応えた。
「地下牢です」
「何……!!」
「伊達の次期当主に刃を向けたのです、許すわけにはまいりません!」
「弁丸は俺の頼みを聞いただけだ! 俺の病巣を取り除いた“医師”をおまえたちは捕らえるのか!?」
「あなたと弁丸のしたことはそれだけ大変なことなのです!!」
「……っく……」
 かいまきをはねとばして身を起こし、小十郎につかみかかるが、その手をあっさりと外した小十郎は逆にきつく手を締め付けるように捕まれた。
 間近から食らう小十郎の剣幕に、思わず圧倒される。
「弁丸は伊達の家臣ではありません。真田――武田、そして今は徳川や織田にすら連なる者。それが、貴方様に刃を向ける、この意味がおわかりにならぬはずがございません!」
「弁丸が俺に仇なすとでもいうのか!」
「弁丸の忠心は幼いながらもたいしたもの、それはこの小十郎も判ります。しかし、他の者はそうは見ない! 弁丸は間者、その背後は武田か織田か徳川か……そう疑念を持つ者が少なからずいる! 聡い貴方ならば判るはずだ!」
「…………」
 口ごもるしかなかった。
 弁丸の微妙な立場は判っていた。
 そして、自分自身の立場の揺らぎも。
 今、伊達の家中は嫡男梵天丸と次男竺丸の両派に別れていた。
 疱瘡の折り、竺丸側にすり寄った者たちを信じられず病後の面会すら断ったことで、「病み上がりの病弱で神経質な梵天丸よりも健やかで大らかな竺丸の方が良い」という声が密やかに、しかし確かに広がっている。
 そこに、世話をさせていた弁丸に手をかけられたとあっては、おそらく梵天丸の嫡男としての資質は疑われることになるだろう。
 きりり、と唇をかむ。
 ばからしい、と思う。
 人の思惑なんて、勝手に思い巡らせておいて決めつけてくる。
 本当にある意志とか感情なんておいてきぼりだ。
(俺は)
 誰よりも信じられる弁丸に、この最大の弱点を消してもらっただけだ。
 そして同時に、弁丸に右目を捧げたのだ――誰よりも信じているとの証に。
 そ、と右の瞼に触れる。
 痛みは思ったよりもない。処置がよかったのもあるだろうが、病巣自身を取り除いたことで、すっきりした気分だ。
 弁丸は、自分の思い、そして信頼に応えてくれた。
 それなのに。
「なんで……!」
 大人たちの勝手に、弁丸が犠牲にならなければならない!
 悔しくて悔しくて、膝のあたりを握りしめたとき、静かな声がするりと室内に入り込んだ。
「……弁丸を牢に入れたのは、私だよ」
 小十郎が声の方に向かって手をついて頭を下げる。
 暗い室の入り口に立っていたのは、あまりに久しぶりに見る父だった。



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弁ちゃん登場なし。
しかし政宗パパ登場です。
そして小十郎がやっぱり空気です……orz



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あきゅろす。
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