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また明日 笑えるように。

さくり、さくり。
今日も今日とて、私は穴を掘る。

さくり、さくり。
いつもは 誰が落ちるかな、とかそんな事を考えながら掘るのだけれど 今回のは、ちょっと特別。

さくり、さくり。

「…よし」

ちょうど 人が二人入る位の穴が出来た。






「…っ、く…」


ぽっかりと空いた穴の底、小さくうずくまった滝夜叉丸がそこにいた。くしゃりと顔を歪ませて、今にも泣き出しそうに そっと宙を見上げる。


「わぁ」

「…へ?」


見上げた先に映る色は 蒼ではなく翠で。そのままゆっくりと視線を上げれば、見知った温かな笑顔。


「な、七松先輩…?」

「せーかいー」

「…っな、何で こんな…というか、いつの間に えっと…?」

「滝」

「は、はいっ?!」

「…何かあった?」

「……」


ぺたりとその場にしゃがみ込み、二つ下の後輩に目線を合わせる。滝夜叉丸は じっと自身を見詰めるその視線に耐えられなくなり、観念したように口を開いた。


「……今日、四年生で課外実習が有りました。…決して、難しい授業でも無く て」

「うん」

「…もっと上手く出来た筈なんです! もっと、私は 私なら上手く…っ」

「…うん」

「…だから、私は…」

「出来るよ」

「え?」

「滝は、誰より努力してる。私は、それをよく知ってる。だから、」

(頑張れなんて 言わない)

「今は 思いっ切り泣いとけ!」

「……う…」


大きく開かれた瞳から、ぼろぼろと涙が零れ落ちた。





(滝、出来たよ)

(…少し、大きくないか?)

(おやまぁ。私の自信作に文句をつけると?)

(あ、いや そういう訳では…)

(なら、気にしないの)





「…おや、立花先輩」

「また穴掘りか? まぁいい、後で委員会があるから 遅れないように」

「はーい」


さくり、さくり。
今日も今日とて、私は穴を掘る。

(ねぇ、滝 大きめに作って良かったでしょう?)







+++
綾部さんも小平太も滝が大好きです。滝は人前ではあんまり弱音を吐かないかなー、と。まぁ、いけどん委員長には敵いませんが(笑) ちなみに、綾部さんは当然の如く委員会に遅れます。マイペース人間!



あきゅろす。
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