not alone
何を考えてるのか分からない。
不思議な奴。
つかみ所が無い。
私への第一印象は大体こんな感じらしい。肯定もしないが否定もしない。自分から見た自分と、他人から見た自分とは、必ずしも一致しないものだ。
いつだったか、お前は強いと そう誰かに言われた。それは肉体的な強さではなく、精神的な強さだとも。(私は そんな風にも見えるのか、と)
「…強くなんて、ないのに」
下弦の月の下、堀り進めた塹壕の中から空を見上げ ぽつりと呟いた。ざわ、と心が揺らぐ。 誰もが恐怖や不安を抱えて生きていて、私だって 何ら変わりはなくて。
(独りの夜だって 本当は、怖い)
夜も更けようかという朝方。カタン、と戸を開け そっと中を覗く。耳を澄ませば、聞こえてくる規則的な寝息。起こしてしまうには早すぎると、同室の彼に気付かれないように、まだほの暗い部屋へと足を踏み入れる。
「帰ったのか…?」
「!」
のそりと横たえていた体を起こし、いつの間に 君は私の方へと視線を向けていて。
(起こしちゃった、かな…)
「…ごめ--」
「おかえり」
「……え?」
「だから おかえり、喜八郎」
謝罪の言葉はあっさりと遮られ、(怒られるかと思っていたのに) 君は眠たそうな目を細めて微笑んだ。
「また随分とボロボロだな」
「…滝だって、酷い顔だよ」
(嘘、そんな事思ってない けど)
「…失礼な奴め。寝起きなんだから仕方ないだろう」
(とっさになんて言えばいいのか、分からなくなって)
"おかえり"
その たった一言が、こんなにも嬉しくて、安心出来た。
(私は 確かに独りだったけれど)
君が此処にいてくれるならば、今はもう独りじゃない。
「ただいま」
+++
久々更新でした、綾滝。ぐだぐだ感が否めない! 綾部さんはもうこの後完璧に吹っ切れます。そして好き勝手やらかして今に至るよ! みたいな(笑)
因みに、たまに英語のタイトルに走りますが、結構適当につけてますこれ…(←)
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