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ありふれた幸せと。

委員会の無い日は実に平和だ。最も、あの忙しい日々の方が日常となってしまっているので 逆に物足りないと思ってしまう自分もいる。…悲しいことに。


「滝、腕相撲しようか」

「は? 何だ突然」

「…意味はないねぇ」


その発案者はといえば 縁側に座り、ぷらぷらと落ち着きなく足を揺らしている。つまり、暇を持て余しているのはお互い様なのだ。


「まぁいいだろう。ただし! やるからには負けないからな!」


ぴしりと綾部を指差し、早くもどこか勝ち誇ったような表情を向ける。綾部はいつものように気の抜けた声で おやまぁ、と呟いた。


「勝負は潔く一回だ。いいな?」

「りょーかーい」

「では…よーい、初め!」


ぐ、と両者 握った手に力を込める。先に声を上げたのは滝夜叉丸だ。


「お前…こんなに力強かったか…?」

「おや、降参?」

「な! 誰がっ…!」


綾部を見れば、いたって涼しげな表情で それが余計に腹立たしい。


(いつの間に…いや…)

思い当たる節が無いわけではない。…彼の趣味兼特技である穴掘りだ。それなりに重いだろう鋤を、あれだけ軽々と しかも長時間使いこなしているのだから、力がついて当然とも言える。認めたくないのもまた事実ではあるが。


「てーい」

「え、おわっ!?」


びたんと滝夜叉丸の手は机に倒され、悔しそうに綾部を見れば

「はい、私の勝ちー」

余裕綽々といった風に、空いた手でブイサイン。


「くぅ…」

「勝負は一回でしょう?」

「分かっている! 私の負けだ 認めてやろうじゃないか!」


何故負けたのに偉そうなのか とも思ったが、決して口には出さない。素直に負けを認めただけ良しとするべきだ。綾部は一人納得し それからふっと小さく微笑んだ。


「な、何だ! 何がおかしいっ」

「べっつにー?」




(ねぇ、君はまだ気付いていないでしょう)


繋がれたままの手から伝わる温もりに どこか優越感に似た幸せを感じた、そんなある日の昼下がり。







+++
前半→滝 後半→綾部さん視点みたいになってしまいました。なんとまとまらない! 年相応に遊んだりしたら可愛いなーと思いつつ、何をしたら年相応になるんだろうと(笑)



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