温情。 迷うことのない人間などいるのだろうか。 立ち止まることのない人間などいるのだろうか。 「俺たちはただ命令に従うだけだ」 ティエリアは相変わらずの無表情で言う。 アレルヤは少しだけ肩をすくめた。 「君は強いね」 「別に」 会話が途切れ、二人はただ窓越しに映る地上を見下ろす。 アレルヤがちらりと隣の青年に目をやった。 真っ直ぐな瞳。 揺るがない感情(おもい)。 それはアレルヤにとって羨ましくもあり、時に不安にもさせる。 きっと君は、弱みなど決して人に見せないだろう。 何もかも自分の中にしまいこんで、前に進んでいくのだろう。 君は強いから。 けれど、 「知っているんだ」 「何を」 無意識に声に出していたらしい。 ティエリアがそう問いた。 見つめられて、慌てて微笑みながら返す。 「あ…いや、何でもないよ」 「…」 …そう、知っているんだ。 人は決して、 一人では生きていけないと。 |