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とあるホテルの一室。 山積みにされた書類に囲まれて、ディーノはひたすらにペンを走らせていた…のだが、

「あーもうっ! いつになったら恭弥に会いに行けるんだっ!」

不意に机をおもいっきり叩きつけ、立ち上がった。
その際に机の角に足をぶつけたらしく、ディーノの声を聞いて部屋に入ってきたロマーリオは、足の先を抑えてへたり込んでしまっているディーノの姿を見る事となった。


「何してんだよボス…」

「っつぅ…」


若干涙声のディーノを起こしてやってから、ロマーリオは溜め息をつく。


「で? 恭弥が何だって?」

「最近ずっと会ってないんだよ! ここんとこずーっと仕事ばっかで…っ」

「それが本業だろうよ…」

「恭弥の家庭教師兼恋人がオレの今の本業だ!」


握り拳をつくりながら、何故か自信たっぷりに言い放つディーノ。
ロマーリオが呆れ顔でディーノを見ていたが、当然の様にそれを無視して続ける。


「きっと恭弥だって寂しがってるに違いないんだ…毎日カレンダーを見つめては会えない日々を数えて溜め息をつき、オレへの想いを募らせつつも ああ、仕事の邪魔をしちゃいけない なんて想いと板挟みになって…」

「…」

完全に妄の世界に入っている。


「…仕方ねぇな」

「へっ?」

「行ってこいよ ボス」

にっとロマーリオは笑いかけた。 途端、ディーノはまるで子供のように目を輝かせる。

「…良いのか?」

「少しだけだぜ」

「…ああ! ありがとなロマーリオ!」

勢いよくディーノが飛び出した後、--人が階段から転がり落ちる音と、見知った声をロマーリオは聞いた。

「…はぁ」





「へへっ恭弥の奴、いきなりオレが会いに来たら驚くだろうなー」

小さく笑みを浮かべ、ディーノは雲雀の家を見つめた。 独自の情報網からやっとの思いで調べあげた愛しい恋人の家。
はやる気持ちを抑えながら、ディーノはチャイムを鳴らした。

「…」

何度か鳴らしてみるものの反応はない。

「…入ってみるか…」

勝手につくった合い鍵を取り出し、ゆっくりとドアを開けてから、玄関へと足を踏み入れる--
瞬間、数本の矢がディーノ目掛けて飛んできた。

「なぁっ!?」

何とかそれをかわす--正しくは勝手に躓いただけだが--と、奥から人の気配がした。


「チッ、外したか」

「恭弥っ!?」

「…何してるのあなた」


雲雀は、玄関先で尻餅をつくディーノを見下ろした。

「それはこっちのセリフだっ! 何なんだよコレっ!?」

ディーノが自分の直ぐ上を掠めていった矢を指差す。 雲雀は指差した方向に軽く目をやってから、

「対変態用」

淡々とした口調で言った。


--変態とは、言わずと知れたあのパイナポーに相違ない。


「…ったく、こんなモノどっから…」

「触らない方がいいよ、毒が塗ってあるから」

「っ!!」

地面に散らばった矢に手を伸ばしていたディーノは、すんでのところでその手を引き戻す。
何とも言い難い表情で矢を凝視すると、確かに矢の先端に 紫色の液体が付着しているのが分かった。


「…お前なぁ…」

「…あなたが勝手に来るのが悪い」

不意に、雲雀は視線を背らした。


「…」

ディーノは身を起こし、雲雀の元へ歩み寄る。


「…ずっとほったらかしにしててごめんな」

「別に…」

あなたのせいじゃない、そう小さく呟く雲雀を抱きしめて、

「会いたかった」

ディーノはそっと 耳元で囁いた。











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