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prayer

「…、」

意識はまだぼんやりとしていて、現実から遠く離れているような感覚。瞼が重い。

(香住の、家)

段々と意識がはっきりしていく。ここまでの経緯を思い出して、思わず眉を顰めた。
確かに疲れていたのは事実で、眠くなかったといえば嘘になるのだけれど。


(…甘えすぎだ)

むくりと体を起こし、何処か居心地が悪そうに息を吐く。

(香住…は、)

ゆっくりと視界を巡らせば、やがて目的の人物へと辿り着いた。部屋を出て直ぐの廊下で、壁にもたれかかって電話をしている。内容までは聞き取れないが、所々に混じる笑い声から 親しい間柄なのだと分かった。
相手は女、と考えるのが妥当だろう。別にいつもの事だけれど、決していい気はしない。

はた、と香住が此方を向いた。何だか気まずくて、とっさに視線を反らす。

(何も疚しい事はしてないけれど!)


「亮、おはよ」

「…おう」

「何だ 低血圧かー?」


歩み寄り、くしゃりと髪を撫ぜられる。自分より幾分大きな手が、妙に温かくて くすぐったい。


「…電話! もういいのかよ」

「ん? ああ、大した用じゃないし」

「へぇ? その割には楽しそうだったじゃ…」


言いかけて、そこで言葉が途切れる。

(…待て、今のは 何か)

「あれ、亮くんヤキモチー?」

「っ!!」

(ああ、やっぱりそういう発想に至る!)


「違っ…! 誰がそんな」

「照れなくてもいーのに」

「照れてない!!」


全力で否定するも、香住は憎たらしい位に嬉しそうな笑みを浮かべていて。 (腹立たしい!)


「亮」


まぁ、在り来たりなんだけれども と苦笑して。


「愛してます」

「…ばーか」


永遠なんて信じてないけれど、不変なんて有り得ないけれど。

(この幸せが続けばいい、なんて)

そんな、子供じみた
祈りにも似た、一つの願い。







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亮くん乙女! 乙女がいる!(爆) 前回が香住さん視点だったので、今回は亮くん視点。こうも変わるものですね(笑) どうしても甘ったるくなってしまいます。



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