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小咄部屋
09/3/14:島とアザレ
※島とアザレのケンカ話
この二人はもうどっちがどっちでもいいと思う





「もう、どうでもいいよ」

溜息と同時に吐き出された言葉に、心臓が凍った気がした。




「じゃあ、謝ればいいだけのはなしだ」

普段は微塵も見せないような不機嫌顔で、日吉が苛立ったようにそう吐き捨てた。
そりゃ仲の良くない、むしろ悪い僕なんかに部屋に乗り込まれたら不機嫌にもなるだろうけどさ。

「な、なんでぼくが!」
「島怒らすなんて、相当なことしたんだろ。ハイ解決。帰ってくれ。」

野良ネコでも追っ払うかのように手を振る日吉に、猛烈にこの部屋を飛び出したくなったが、すんでのところで踏みとどまる。
僕だって好きで、日吉なんかの部屋に乗り込んでるんじゃない。
普段だったら、こんなところ頼まれたってくるもんか。
でも、

「だ、だって、変だ。島はいつも、あんなこと言わない」

ひそめられた眉。
興味がなくなったと言わんばかりにそむけられた瞳。
呆れたように竦められた肩。
拒むようにむけられた背中。

今思い出しても、手が震えて。

「別に、僕は、いつもと同じだったのに。なんで、今日ばっかり」

熱くなる眼尻を誤魔化すようにして、俯く。
がんがんと頭は痛くて、胸が痛い。
なんだかよくわからない焦りに、手が震えるのが抑えられなくて。
俯いて立ちすくむ僕を見て、日吉は呆れたように呟いた。

「確かに今日、アイツは機嫌が悪かった。だからだろ。」

どうせ、明日には忘れていつも通りだろうさ。
そう続けられた言葉に、俯いていた頭をあげた。

「ほ、本気だったらどうするんだ」
「本気?」
「本当に、僕のこと、き、嫌いになってたら、」
「知るか。どっちにしろ、仲直りしたいんだったらお前が謝ればいいだけの話だ」

そう言うと、これで話は終わりだと言わんばかりについには体ごとそむけられて、僕の目には日吉の背しか見えなくなった。
それはまるで、先ほどの島のようで。

胸がずきずきと痛い。
なんでぼくはあの時、部屋を飛び出してきちゃったんだろう。
日吉の言う通り、明日には普段どおりかもしれない。
でも、でも、


明日も、冷たい目で見られたら?


想像したら、喉の奥が痛くなった。

だっていつだって許してくれたのに。
いつもと同じだったのに。
いつもみたいにしょうがないな、って困ったように、でも笑って許してくれると思ってたのに。

ふいにそむけられたその背中が、怖くて怖くてしかたなかった。

初めて感じた恐怖に僕は今、立ちすくむしかできなくて。
ただただ、明日が来ることが怖かった。





****
ちなみに、次の日やっぱり島は機嫌の悪さも忘れて、普通に挨拶してきたらしいです。
でも数日間は、アザレのわがままは少なくなって、島は首をかしげ、一実は鼻で笑っていた、そんな学園ライフ。

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