小咄部屋 09/07/11:弟×兄 ※前回小咄の弟と兄です。 弟×兄で、そんでもって薄暗いです。 大丈夫な方は、スクロールどうぞ。 「兄さん、もう、どこにも行かないでよ」 「・・・せ、ん?」 兄さんの目の前に立ちはだかった俺を、兄さんが不思議そうに見上げてくる。 綺麗な、綺麗な兄さん。 見た目は、たぶん一般的な容姿なんだろうけども、この人の魅力は見た目じゃなくて、中身にあって。 誰よりも聡明で、誰よりも誰もの理解者で。 そばにいるだけで、世界に認められたような気になれるのだ。 大切な、大切な俺の兄。 「どこに、行くの?」 「・・・今日は、高校の時の友達と遊びに行く予定だったけど・・・どした、泉?なんかあった?」 どさりと肩にかけていたバックを廊下に降ろし、俺の顔をのぞきこんでくるその瞳は、間違いなく俺のことを心配して。 ほら、すぐに分かってくれるんだ。 すぐに気付いてくれる。 でも、 「もう、嫌なんだ」 あなたのその瞳が、俺以外の人を映すのは。 俺だけを、心配して? 俺だけを、見て? 俺だけに、笑いかけてよ。 「おれ、のそばにいて」 「泉、ほんと、どうしたんだ?」 溢れる切なさのままに、俺の頬にほろりと涙がこぼれおちて。 兄さんは苦しそうな顔をして、俺の頬を両手で包んでくれた。 あったかい、その両手。 ねぇ、その手も俺だけのものにしたいんだ。 誰にも、渡したくないんだよ。 この気持ちって、やっぱり変なのかなぁ? 「泉、泉・・・落ち着いて。ゆっくり、息を吐いて。」 兄さんの誘導するまま、ゆっくりと息を吐いて、息を吸って。 兄さんは、俺の額に自分の額を当てて同調を促し、俺の乱れた息を整えてくれる。 ゆっくりと呼吸をして、兄さんの吐息と、俺の吐息が重なっていくのを感じた。 切ない。 それだけで、切なさで胸がギリギリと痛むんだ。 この吐息のように、一つになってしまえればいいのに。 そしたら、ずっと兄さんを俺の体の中に仕舞って、誰にも渡さずに済むのに。 「どこにも、いかないで。にいさん。」 ねぇ、一緒に堕ちてよ。 この世界の倫理より、俺を。 おれを、えらんで。 *** 弟(16)×兄(26)でした。前回とはつながってません。多分。 弟→兄色強めで行ってみました。 市ヶ谷家は、ちゃんと血はつながっていますよ(笑) ちなみに年齢は今適当に考えました。 のちのち変わるかも。 [*前へ][次へ#] |