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短編
−3 *end

「おい、カザ!サイとばっかりしゃべって・・・!我のことも、構えっ」

キラキラと光る金色の絹糸のような髪。
アクアブルーの大きな瞳が、生意気そうに吊り上ってこちらを見上げている。
その顔は天使のようにかわいいものだったが、言葉が高慢ちきに、子ども独特の甲高さで店に響いた。

「いらっしゃい、キョウ。今日は一緒だったんだな。」

そう言って頭を撫でてやれば、「さわるなっ」と、僕の手を振り払いつつも、隠しきれないはにかみ笑顔がその顔に覗いて。

サイが時折連れてくる少年の、キョウ。
話し方や話題、その服装なんかを見てみると、どうやらいいところのお坊っちゃんらしい。
サイはキョウを連れてくると、キョウの動きにひどく敏感になって、まさに「王子と護衛」とでも言うべき鋭い視線。
キョウの身分もそうだけれど、僕はサイの身分やらなんやらもまったく知らない。
ただ、いつも腰に剣を下げ、戦闘に使うものを買っていくので、剣士なんだろうとは予想付くけれども。
サイは、キョウん家の騎士か何かなのかもしれない。

この世界はそう言った騎士や執事、王子といった存在は普通にいるのだそうだ。
文化において、まるで中世のヨーロッパのような感じがすることは多い。
ただ、前、サイに強請って持ってきてもらった地図は(ここでは地図は貴重なものらしい)、まったく知らない形の地形図を写していたので、ヨーロッパではないことは確かだ。
あぁ、僕は異世界に来てしまったんだなぁと、その地図を見てしみじみと思ってしまったものだ。

サイもキョウも自分の身分は言いたがらない。
おそらく身分を隠さなければいけないほどに、高い身分なんだろうとは思うけれど。
それでも毎週のようにこの店に来られると、ついつい気安く声をかけてしまう。
まぁ、二人は気にしてないようだから、いいのかもしれないけれどね。

「サイ、今持ってくるからちょっと待ってて。キョウ、ちょっと離してくれよ〜動きずらい〜」

笑いながら、キョウとじゃれあって店の中を回る僕をみるサイの眼は暖かく。


結構、この世界の生活にも慣れてきたみたいです。僕。



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