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短編
−2

「・・・邪魔する」
「あ、サイ。いらっしゃい。」

身元も不確かな僕を快く保護してくれたのが、そのとき出会ったラギじいさんと、チイばあちゃんだった。
ラギじいさんはフラフラだった僕を家まで連れて行ってくれ、チイばあちゃんは暖かいスープを出してくれた。
泣きたくなるほど暖かかったあの時のスープの味は、今も忘れられない。

二人は、もうなんだかわからない、何も自分の現状を説明できない僕を、何も言わずに家においてくれている。
そのおかげで僕は衣食住に困らず、じいさんがやっている薬屋の店番をしたり、なれない力仕事をしたりしながら、現状を把握する毎日を送っている。
幸運なことに言葉は通じたし、なんとか数字も読めた。
同じ10進法でよかったよ。値段の計算なんかもできる。
文字はちょっとわからなかったが、ここでは識字率はあまり高くないらしく不思議には思われなかった。
そんなこんなで、じいさんとばあさんにも、僕がどうやら異世界からきてしまったようだ、ということは話していない。
いつかは話そうと思っているけれど、まだその心の準備はできていないのだ。

そんな毎日の中で、村の人や店の常連さんなんかで知り合いも段々と増えて。
今目の前にそびえたつ、長身の美丈夫もそのうちの一人だ。

「サイ、今日は?」
「・・・火炎薬と、砥石を10ずつ。」
「はいはい、っと。・・・ん?砥石は一週間前に買っていかなかったか?」

不思議に思って首をかしげた僕に、サイはしばし黙ってから、「・・・無くなった」と呟いた。
この男サイは、顔は良いし、腕っぷしも強いようなのに、いかんともしがたいほど無口なのだ。
まぁそれも女子らにとっては魅力の一つか、と心でため息をつく。
サイが村の外を歩いていた時の様子を思い出して、なんだかあっちの世界を思い出した。
女の子は、どの世界でもシビアらしい。
そんなサイのモテ男ライフは、それだけならいいけれど。
それにしたって、砥石があっという間になくなる日々というのは、あまりよろしくないだろうに。

「そっか・・・。まぁ、怪我には気をつけろよ。」

心配げな表情になってしまったのだろうか。
そう呟いた僕に、サイが小さく微笑んだように見えた。
この男、表情も無表情に近いので、表情も読みづらい。
じつ、とその顔を見つめていると、どしん、と腰のあたりに衝撃が走った。
おぉ?と視線を下に下げてみれば。



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