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短編
    −2*end


けれど、どうだろうか。


「それ。生徒会に、報告しに行くんだろ?」
「う、うん。そうだけど・・・」
「じゃあさっさと行って、帰ろうぜ。」

さりげなく抱きよせて、手首をつかんでいる手とは逆の手で、少し乱れてしまった秋月の髪を梳いて整える。
その感触にくすぐったそうに笑う、その笑顔に体温が上がる。

俺の秋月。
小さい頃からずっと、おまえは俺の宝物だった。
その笑顔も、優しい心も、暖かい腕も。
全部、全部。


俺だけのものだったのに。


これから向かう先のことを考えると、腸が煮えくりかえるような気がして、自然と眉尻が上がった。
その表情を見せないように、秋月にはわからないように顔をそらして。


二人だけで完成された世界に土足で踏み込んできた、アイツラ。

生徒会役員。

顔と頭脳と権力だけは一級品だが、性格は破綻しているようなヤツラばっかりの癖に。
なんで秋月に目を付けたのか。
そして、やたらと構いたがるのか。

そんなのわかっている。
何故なら奴らは、俺と同じものをその内に飼っている。
己すら食いつくそうとする、荒れ狂う獣。
だからヤツラは気づいたのだ。

秋月の、柔らかいその内側に。


身の内に飼っている獣を優しくなだめる、優しい手に。


嫉妬心に、胸をかきむしりたくなる。
このどうにもならない怒りを叫んで、あのお綺麗な顔を原形がわからなくなるまで殴りつけてやりたい!

たった二人だけの世界が、ゆっくりと壊れていく音がする。
気の所為であって欲しい。
この暖かい世界が壊れるなんて、あってはならないのだから。
けれど、ゆっくりとした終末の足音が聞こえて来るような気がして、その恐怖に手が震える。
目眩がしそうなその寒気に、思わず祈るように名前を呼んだ。

「あきづき、」
「ん?なに、耀。」

すぐに返ってくる返事。
その柔らかなイントーネションに、体を支配していた震えが治まる。

大丈夫。
まだ大丈夫。
秋月は俺の傍に、いる。

「どうした?耀、調子悪い?」
「いや、」
「よし、じゃ早く帰ろう!今日は、耀の好きな湯豆腐にしよう!」

そう言って笑った秋月を見て、その安堵感に泣きそうになる。

あきづき。
あきづき。

お前は俺のそばに、ずっといてくれるよな?
お前さえいれば、俺はどんなことだってできるんだから。
お前は、俺がいなければなにもできない、なんて言うけれど。


俺は。


お前がいなくちゃ、息も吸えないのだから。




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