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短編
−D*end


(『 恋を、した。きっとこれが、恋に違いない。』)


出会った日のこと。つきあった日のこと。初めてのキス、セックス。
全部が優しくて、幸せしか感じられない言葉で、書き綴られていた。

呆然と、した。


俺は、こんなに、愛されていたのか?


体だけの関係なんかでは、なかった。
お互いが、都合のいい存在だったから、一緒にいたわけじゃなかった。
愛していなかったから、なにも言わなかったんじゃなかった。
俺の浮気に、なにも思わなかったわけじゃなかった。

ただ、俺を想って。


ぼろり、と。
自然に、涙が、こぼれた。


呆然と宙を見つめる。
いつだって優しかった。笑っていた。好きだと言っていた。
俺はそのすべてを疑って、あざ笑って。

その気持ちを信じて、裏切られるのが、怖かった。
けれど、



俺たちの間には、確かに愛が、あったのか。



最後のページに綴られた、”アイツ”の言葉。



(『これが、愛なのかな。なんて、幸せなんだろう!』)



「・・・俺も、・・・愛し、て・・・」



ここで言っても、もう、伝わらない。
愛してる。
ずっと、愛してたんだ。

何故、伝えなかったんだろうか。
何故、「いつか」を、信じていられたんだろうか。
「いつか」、なんて。
誰にでも平等に訪れるなんて、そんなことはないのに。

涙は止まらなかった。
震える両手で、顔を覆った。
体を折り曲げて、そのままベットに突っ伏して。


「あ・・・あ、あぁあぁぁぁ!!!!!」


叫ぶ。
このどうしようもない想いに、喉が痛むほどに叫んだ。
両手の指の間を涙が伝っていく。
まだ、”アイツ”の香りが残るシーツに、俺の涙がしみこんで。
喉が、焼ける様に痛い。
叫びに、苦しさに、後悔に。
胸が握りつぶされる痛みに、死にそうなほどのたうち回った。


いっそ、この痛みに、死んでしまえればよかった。



そうしたら、この愛を、伝えることができるのだろうに。








「きっともう、誰も信じられないのだと思います。」

きょうだいだけで生きていくのだと、少年は語った。

「だって、兄さんは僕たちの母で父で兄で弟で友達でライバルで初恋の人で・・・・・世界だったから。」

僕たちにとっては、もう、世界は終わったんです。
もう、なにもない。
そう呟いた少年の眼は、やはり凪いでいた。
なにも映さない、闇の様に。

「これからだったんです・・・これから。これから、幸せにしようと、」

少年はそこで言葉を切って、小さく笑った。
それから、気分を切り替える様に首を振ると、俺に一度だけ小さく会釈をして走り去って行った。

少年たちがそれからどうなったのかは、知らない。




俺と同じく、幸せではないことは、確かなんだろうけれども。





***
注ぐはずだった想いを目一杯抱えて、一生生きる人たち。

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