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短編
探偵と助手1
※高校生探偵×助手 に成り損なったもの。
ただの幼馴染カップルの溺愛攻めに。
珍しく攻め視点です。


「・・・と、なる。ここまででジャスト一分。だから、先輩は三階から一階まで移動出来たってわけ、だ。」
「あぁー!なるほど!」

今いる教室の窓から見える中庭を俺が指さすと、目の前のふわふわとした真っ黒な髪が大きく揺れた。
真黒な髪に、真黒な瞳。
取り立ててなんの特徴もない、平凡なありふれたその顔。
嬉しげに眼を瞬いている目の前の平凡な男、笹 秋月(ササ アキヅキ)は、手元の手帳に一瞬目を流し、そして悲しそうに目を細めた瞳に俺を映してから、ゆっくりと首をかしげた。

「じゃあ、やっぱり犯人は・・・」
「先輩、だろうな。」

そっか・・・。と、まるで尻尾を力なく下げた犬のようにしょんぼりとしぼむその姿が、キリキリと俺の心臓を締め付ける。

だから、俺はお前にこんなこと関わらせたくないのに。
お前が傷つく姿なんて、一瞬たりとも見たくないのに。

俺は、ボールペンを握るその手首を掴み、勢いよくその手をひっぱりあげて窓際の机に腰をかけていた秋月を立たせた。
コイツに少し上背があると言っても、俺より7.8センチは小さいのだ。
手首をつかんだそのままの状態で、俺は教室の出口へと歩き出す。

「ちょ、ちょっと!突然どうしたんだよ、耀・・・!」

秋月は突然のことにもつれる足で、それでもなんとか転ばないようにと必死に俺についてきて。
昔から変わらないその盲目的な信頼が嬉しくて、そして何故か酷く息苦しい。
これは俺がずっと望んできたことで、そしてこれからもこの関係を維持するためなら何でもやると、そう妄執してきたことなのに。
最近何故か、長い年月をかけて紡ぎあげてきたこの強固な俺と秋月のつながりが、酷く脆く細い糸に見えて。

心臓が凍るような不安で、押しつぶされそうになるのだ。



笹秋月と俺、神薙 耀(カンナギ ヨウ)は、幼馴染として生まれた。
母親同士が幼馴染で、家族ぐるみでの付き合いをしていたのがそんな運命のきっかけであり、生まれた年も、日付すら一緒の俺たちは、何をするにもずっと一緒だった。

何をするにもちょっとだけ秀でていた俺の後ろを、秋月はいつだって着いてきて。
秋月を手離さないために、俺は秋月が望むことなら何でもやった。
俺は秋月の信頼に答える力を持っていたし、そしてそれは秋月の俺への盲目的な信頼を育てる力となって。

この、馬鹿げた探偵のまねごとだってそうだ。

何故だかいつの間にか、俺たちの通う男子校の権力者である生徒会と面識ができてしまった秋月は、何故だかそいつらから面倒事を頼まれるようになって。
俺の容姿が整っていたこともあり、一緒にいる秋月が必要以上に目立つことをあえて避けていたというのに、嫌な奴らに目をつけられた。
けれどそれはポジティブに考えれば、手に負えない面倒事を抱えた秋月が、俺を頼る構造が出来上がったことでチャラになるところではあった。
その秋月が最初に泣きついてきた時は、そう思った。
秋月がただ俺だけを信じて、俺だけを頼って、俺だけに縋る。
その度に、俺の体は喜びで震える。

秋月の一番は俺なのだと。
否、一番なんて生温い。
俺だけが秋月の唯一であれば、と。




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あきゅろす。
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