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シリーズ
−A

お金持ち・美形・権力者だらけの一之瀬学園では、僕のような貧乏・地味・平凡な人間に人権なんてないようなもので。
もちろんそんな僕には友達なんて、全くいない。
唯一、寮の同室者とは比較的仲がいいけれど、一か月も泊まらせて欲しい、なんてとてもじゃないけど口が裂けても言えない。
母さんも、死んだ父さんも、天涯孤独の身だったので、親戚もいない。

まさに八方塞がり。

そんなこんなで全く打開策が見い出せないまま、茫然自失でフラフラと街をさまよっていた僕は、空が暗くなった時間に、うっかりとんでもない場所に足を踏み入れてしまったことに全く気がついていなかった。
普段だったら、絶対気をつけていたのに・・・!



「オイ、」
「ハイ?・・・っ、」

背後から低い声で声をかけられ何気なく振り返った僕は、振り返ったことに地の底より深く後悔した。

「金、出せ」
「すぐに出したら、痛い目は合わなくて済むからよォ」


こ、これは・・・いわゆるその、カ、カツアゲってやつですか。


見るからに人相の悪い男たち5人ほどが、僕を囲むように迫ってきた。
僕は唯一の荷物であるボストンバックを抱えるようにして、後ずさりして。
お金なんてたいして持ってないし、あったとしても3千円もない。

何せ、僕は貧乏なのだ。
学校では最小限のお金だけで暮らして行けたし。
家に帰ったら、家のお金が使えると思ってたし。
まぁそんな言い訳を目の前に不良さんたちにしても、聞く耳持ってもらえないことは百も承知なので、言いませんけど!
貧乏って大変なんだぞ!もー!

ゆっくり後退していた僕の背に、冷たいコンクリートの壁がぶつかった。
完全に僕を路地に追いつめた形になった男たちは、皆、口元にニヤニヤとした笑いを浮かべ。

弱者に対する絶対的強者の顔。

僕は今までの人生、いつだって弱者の立場にいたから、その笑みを何度だって見てきた。
恐怖に足がすくんで動かない。
逃げなければ暴力をふるわれるのが分かっているのに、体はガタガタと震えて、ただただ目の前に迫ってくる恐怖を目を見開いて見つめることしかできなくて。

目の前にまで迫ってきた長身の男が、ひときわ笑みを深くし。
僕の目の前で思いきり手を振り上げた、その瞬間。


「オイ!警察が見回りに来たぞ!逃げろ!!」


男たちのさらに後ろから、切羽詰まったどなり声が聞こえた。
その声に目の前の男はとっさに手を下ろし、舌打ちをする。

「チッ、逃げんぞ!」
「クソッ、タイミング悪ィ!」

そしてすぐに追い立てられるように、路地裏から姿を消した。



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