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シリーズ
B


(他愛もないな。この様子では、”黄”の所の、下位要員か。)

茫然と立ちすくむ残りの男たちに、対峙する。
私は、見せつける様に懐に隠し持っていた警棒を出し、勢い良くそれを振ってみせ。
そうすれば、それはジャキン、と高質な音をたてて伸び、男たちはその音にびくりと体をすくませた。


「・・・まだ、やるか?」


問いかければ、情けない声をあげて、男たちは私の横をすり抜けて逃げて行った。

その背を見送って、ため息をつく。
警棒を元通りの大きさに収め懐に収めると、ふいに声がかかって。

「・・・あ、ありがとう、ございます。」

顔をあげれば、先ほどまで絡まれていた男が、ゆっくりとこちらに歩み寄ってきた。
心配げな目線を向けられ、頭を振って答える。

「いや、・・・怪我はないか」
「ないです。あ、ありがとうございます。お手を煩わせて、すみま、せん・・・」

深々と下げられた頭は、彼の感謝の深さを表しているようで。
頭が下げられた拍子に見えた旋毛に、少しだけ頬を緩めた。

「この時間に、このあたりは危険だと知らないのか。」
「・・・知ってたんですけども・・・、その、急いでいて・・・」

申し訳ないように身を縮みこませるその姿は、どこか小動物を思わせ庇護欲を誘うが、このようなことを繰り返させるわけにはいかない。
私は少し語彙を強めて、ため息をついてみせる。

「自分の身は、自分で守れ。怠るようであれば、今の脳なしどもと同じだ」
「・・・そのとおりです、ね・・・。ほんとうに、ご迷惑おかけしました・・・。」
「・・・・いや、・・・、」

このぐらいの年の者(といっても、私と同年代の者たちであるが)に説教じみたことを言えば、反発するか、媚びるようにへらへらと笑いかけられるかが、最近は多かった。
なので、この男のように本当に反省の様子をを見せ悄然とする者は珍しく、そのしおれた花の様な様子に思わずがらにもなく焦ってしまった。
なにか励ますようなことを言えばいいのだろうが、慣れないことで言葉が見つからない。
私が、言葉を探している間も、目の前の彼は顔を俯かせ、しおしおとその身を縮みこませていき。
人間焦ると、自分でも驚くような行動をとるものだ。
焦った私は、思わずとっさに、そのつむじが見えるほどに俯いた頭に手を置き。
そっと、その黒髪に手を滑らせた。

柔らかい、髪がするりと指の間を通る。

その意外なさわり心地に、まじまじと何度も撫でていると。
じつ、と。

下から感じる、視線。



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あきゅろす。
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