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シリーズ
−H

side:零時

「ここがキッチン、廊下にあったドア入って右がトイレで反対は風呂。」

ずかずかと荒い足取りで部屋を歩く足を進めつつ、振り向きもせずに、一気に説明だけを進めていく。

「ここが俺の部屋。ぜってー入るなよ。・・・・聞いてんのかコラ・・・」
「っ、は、はいいい!聞いてます、絶対入りません!!」

自分の部屋のドアを指さしながら説明するも返事が無く、眉間にしわを寄せながら振り返ると、嫌々背負ってしまったお荷物同居人は、大きく体を震わせ、がくがくと頭を振った。
つか、マジウルセェし。

「とりあえず俺の部屋以外のものは自由に使って構わねぇ。特に困るもんもねぇし。」
「あ、わ、わかりました・・・」
「とりあえずそんぐれー」
「・・・え。あ・・・あの・・・」
「あぁ?」

首をかきながら踵を返して部屋に帰ろうとすると、後ろからか細い声がかかる。
面倒くせぇ、と思いながらも、とりあえず振り帰ってみれば、目の前のか細い男はおどおどと目をさまよわせながらも、口をパクパクしていて。
何か言おうとしているのはわかったので、黙って言葉が出てくるのを待っていた。
が。

「・・・あ、・・・・えと、」
「だああああ!んだよ!言いたいことがあるならサッサと言いやがれ!!殺すぞ!」
「ヒイイイ!!すすすすすみません・・・!僕、何すればいですかあああ!?」
「あぁ?」

いつまでたっても話し出さない様子に苛立ち即効怒鳴った俺に、男は涙目になりながらも、今までが嘘のような大きな声で叫んだ。
なんだ、大きい声も出せんじゃねぇか。
そう思いつつも、言われた言葉に首をかしげる。

「何をする?」
「あああの、僕、お部屋借りるんですし、ご迷惑おかけするので・・・もしよろしかったら、なんか家事とかできるんで、やらせてもらえると・・・キツネも、言ってたし・・・。」
「・・・あー。」

正直それは助かる。
俺は一人暮らしをしているが、これはただ単に親から放り出された結果であって、俺が望んだことではない。
まぁ、実際家出てよかったとは思ってんけどな。
だからと言ってはなんだが、俺は家事全般が全くできない。
気づけば部屋は腐海になるし、食事はすべて外食かコンビニで済ませている。

少し考えてから、いまだに涙目で薄っぺらい体の目の前の男を見る。

てかコイツ。ほんとにメシなんか作れんのか?

小せぇし薄っぺらだしフラフラしってし。
どこもかしこも平凡な作りをしてやがる。
いまどきこんな地味なやつも少ねーだろうにな。
俺はマジマジと男を見回して、フン、と鼻を鳴らした。



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