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シリーズ
−D

「泊まる場所・・・泊まる場所、ねぇ・・・」
「ほんと、気にしなくていいから。」

顎に手を当てて考え始めてしまったキツネに、ああしまった、と頭を抱えたその瞬間。


「アァ?んで、てめぇがここにいんだよ、交渉人。」

背後から、低い、けれどどうしようもなく綺麗な声が聞こえた。
驚きで、僕の体はスツールから文字通り飛び上がって。
慌てて後ろを振り向いた僕と対照的に、隣のキツネはゆっくりと後ろを振り返った。

「あれ?零さん、来たんだ?」
「自分のホームに来て何か悪ィんかよ。つか、奥で寝てた。お前、今日双子は?」
「ドタキャンされた・・・マジ、グれようかと思っているんだけど、どうよ。」
「双子が泣くぞ」

真後ろにいたのは、ダルそうに欠伸をしている、長身の男で。
注目すべきはその声と、容姿。
寝起きだからか少し掠れ気味なその声は、けれど低く体に沁みるような色気のある美声。
そしてその容姿は、真黒な短めの髪を軽く立たせ、同色の二重で切れ長の瞳を長いまつげが縁取って。
ピアスをいくつも開けているが、それが彼の色気を倍増させている。
190センチ近い長身で、長い手足とがっしりした体格は、そのめったに見れるレベルじゃない顔とあいまって、ある種の威圧感を周りに与える。

そんな人を、僕はひとり知っている。

そう、目の前に立つ超美形は、僕の高校でも随一の有名人。
この街にあるチームの一つ『青』を率いるトップ、一陣零時、その人じゃないか・・・・!!

「おい、つか、ソイツ誰?」

遠くからしか見たことのない、まるでブラウン管の有名人のような登場人物に思わずカチンと音がするんではないかというくらい固まった僕に、一陣さんの視線が突き刺さる。

ヒィィィイイ!!怖い!超怖い!!かっこいいけど超怖い!!!

「オイテメェ、誰だよ」

気に入らない人間が目の前にいると、「邪魔だから」の理由だけで殴り飛ばすという一陣さん。
僕もその光景をうっかり見てしまったことがあり、突き刺さるその視線に、その光景が脳裏によみがえって体が震えた。
恐怖で声も出すこともできなくなってしまった僕は、ただただ、一陣さんを見つめて身をすくめるしかできない。
チッ、と舌打ちをして近づいてきた一陣さんに、恐怖のボルテージがマックスになり、うっすらと涙すら浮かべた僕に、けれど救いの神が手を差し伸べた。



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