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番外編
@-5 *end

「島がいなかったら、俺はこんなにクラスを上手く動かせてない。俺一人の力じゃない。島が居るから、何とかなっているんだろ?」
「まぁまぁ、いいじゃんいいじゃん。」
「よくない!!」

怒ったように僕を睨みつけてくる一実の目が、なんだかすごく嬉しい。

いいのに。別に。

僕は別にいいのに、一実は怒ってくれるんだ?
嬉しくて笑みをこぼした僕を、なにやら勘違いした一実がもう一度怒鳴る。

「聞いてるのか!?」
「聞いてる聞いてる。いいんだよ、僕がそう仕向けてるんだから。」
「・・・・・何?」

空っぽになった杏仁豆腐の皿の縁に、軽くスプーンをぶつけると硬質な音がした。
いぶかしげな顔をして僕を見る一実に、僕はちょっと居心地悪くなりながら言葉を続ける。

「あえて、見えないようにしてるんだよ。」
「なんで、」
「一実が特待入学でも、一目おかれるように、かなぁ」

うう、これ以上話したくないんだけど。
けれど一実の射るような視線は、ここで話を終わらすことを許してくれなさそうだ。
僕は、嫌々言葉を続けた。

「特待でクラス委員やってるだなんて、相当実力がなきゃできないだろ。それを、なんなくこなせていったら、一実は一目おかれるでしょ。そしたら、周りもなかなか手が出せなくなるし・・・まぁ、傍に居る僕の壁になるかなーって。」

とか、どうよ。
一実は僕の目を見たまま、口を開いた。

「違うね。」
「えぇー。違くない、」
「いや、言い方を間違えたか。それだけじゃない、だろう?」
「・・・なんのことかわからないなぁー」

僕は、一実の視線から逃れるように、目をそらす。
ううっ、なんかいたたまれない。
射るような眼差しに、焼き殺されそうな気分だ!
怖!一実怖!!

「それなら、別に島が見えなくなる必要がない。寧ろ二人でこなしていけば、僕たち二人の名が挙がる。そっちのほうが、やっかみは少なくなる。」
「・・・二人でやったんじゃ、インパクトが弱い」
「そんなことはないな。特待がやったことに意義がある。」
「・・・・・・。」
「じゃあなんでそんなことしたのか・・・それは、」
「わーわーわー!!聞きたくなーい!!そんなこと僕知らなーい!!」

両手で耳をふさいで喚き始めた僕を、一実はあっけにとられたように見つめた。
しかし、気を取り直し、意地悪げな笑みを口元に閃かせると、僕の両手首を掴み、ぐっと顔を近づけた。

顔同士の距離は20センチもなかったかもしれない。
吐息がかかるほど近くに、真剣な一実の目があった。
その光に思わず息をのんだ瞬間、一実の手が、自身の両耳を塞いでいた僕の両手をひきはがした。


「俺が苦労しないために、俺の立場を確立させたかった?」


これだから、頭のいい奴は嫌なんだ!
折角僕がばれないように、色々根回ししたって言うのに!
ばれた!思ってた以上にこれは恥ずかしい!
こういうことは、相手にばれないようにやるべきなのに!
紫色のバラの人が誰だかわかったら、話だって破綻するでしょ…!

「べ、別にアンタのためなんかじゃないんだからね!」
「ツンデレはいいから。」
「・・・あー、そのだね。一実のプライド傷つけたかもしれないけど、」
「ん、」
「一実は、一人でそんくらいできたかもしれないんだけど、」

「友達のために、なんかしたかったんだよ。」


「そっか。」


ガシャン、と僕の背後で食器の割れる音がした。
わかる、わかるぞ背後の食器を落としてしまった君。

今の、一実の笑みを見てしまったんだな。

今、僕も君と同じ気分だ。


なんだ今の、蕩けるような笑みは・・・!


言葉と共に浮かんだ一実の笑みは、なんかもう、最終兵器だった。
溶ける・・・!溶けてしまう・・・!!
一瞬で消えてしまったのが幸いだったが、うっかり見惚れてしまった。

こりゃ、明日からまたファンが増えるな。
そして僕への当てこすりが増えるんだな。

わかった。僕が目立っちゃうのは、僕のせいじゃないんだな?
周りの人間の態度が、罪作りなだけなんだな?



そんなこんなで、僕の危機は一つ去ったのであった。
余計な危険が、増えた気がしないでもないけど。
東山の写真の売れ行きは順調です。
わーこれで旅行とか行けちゃうんじゃない?
やっほほーい!



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あきゅろす。
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