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番外編
−G

なんだか外の世界が騒がしい。

僕の意識は、覚醒のすぐ下をたゆたっていたので、誰かが何か叫んでいるのは耳に届いていて。
体は眠りに完全に支配されていて、動かないんだけどね。

「・・・ひ・・・、・・・だ!」
「そ・・・・ダ・・・!」
「う・・・せ、」

あぁん?
ほんと、なんか騒がしいな。
こんなうららかな午後をぶち壊すような怒号を上げてるのは誰だ?
もったいないぞ、こんな気持のいい日をゆっくり過ごさないなんて。
しかもこの騒音、だんだんこっちに近づいてき、て・・・る・・・?


っていうか、どっかで聞いたことのある声なんだけど。


「ちょ、それは強引なんちゃう!?」
「島、寝てる」
「知るか。」

ひと際声が間近で聞こえたと思えば、ふわり、と浮遊感が体を包んだ。
その感覚に意識が少し持ち上がるが、寝起きの悪い身体感覚のほうはといえば、うまく僕の意識どおりに動いてくれない。
かろうじて、うぅん、という唸り声と、微かに体をよじらすことができたので、その動きで浮遊感に対する不快を申し立ててみた。
僕はまだこの日差しの中で寝ていたいんだバカヤロー。

「ほら、島ちゃんも唸ってるやないか」
「下ろす」
「煩ぇ。」

どうやら僕は、誰かの腕に抱えられているらしい。
つか、抱えられているというよりは・・・担がれてるのか?
腹の辺りの圧迫感と、頭に血が上る感覚が気持ち悪い。
俵担ぎか、コノヤロウ。

浮遊感にプラス、上下の動きと、頬に風を感じて、自分を抱えた人物が歩きだしたのがわかった。
おいおいどこいくんだよ。っていうかお前は・・・。

誰だよ、と考えたところで気づいた。
この香水の香りと、腕の感触。
ここ最近、富に感じているこの感覚。


それに気づいたとき、僕は少しだけ緊張させていた体から、ほっと全部の力を抜いて、体を完全にその腕に明け渡した。


そしてそのまま、近くにある首に擦り寄るようにして。
背中を包む温かい腕の感触に、安心する。
なんだ。

「ひがし、や・・・ま・・・?」
「・・・んだよ」

舌ったらずな声で名前を呼ぶと、すぐに返事が返ってきて。
その返事に満足して再び意識をゆっくりと沈めていった僕は、返事に宿った不機嫌そうな音色には気づかなかった。

ただ、心中で先輩たちに謝る。
先輩達ごめんなさーい。うちの子がなんか失礼なことしちゃってるみたいで。今度、なんか詫び入れを!
今は眠いのでフォローできやせん。眠り大切です。眠るのサイコー。



このときの僕は眠さが先に立つあまり、すっかり東山と喧嘩していることを忘れて、その腕の中で眠りこけてしまったのである。
ただ暖かい場所でゆっくり眠れるこの状況にくふくふと笑みを浮かべながらさらわれていく僕の姿は、先輩たちを唖然とさせたことだと思う。

邪魔して、勝手に帰るとか。
ほんと僕、後で先輩たちにぶっ飛ばされるんじゃないかな・・・。



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