番外編
−E
「・・・・・・・・・・・久しぶり」
「はい、お久しぶりです当麻先輩。どうです?花の調子は。」
相変わらずの無表情に迎えられた僕は、うららかな日差しが差し込む庭園に足を踏み入れた。
小さな東屋が設置されているその庭園は、学園の奥まった場所にあるせいか人気は少なく、知っている人間は数少ない。
知っているのは僕と、会長と、目の前の当麻先輩。
・・・それと。
「あれ、島ちゃんやんか。」
赤い薔薇の向こうからのぞいたオレンジ頭。
きょとん、とした顔をのぞかせているのは、遊佐先輩で。
「お邪魔してます。」
「突然、どしたん?」
「いやぁ・・・暇だったもんで。」
最近足が遠のいていたせいか、二人に訝しげに見つめられたのを、僕は笑みを浮かべてごまかした。
「お邪魔でしたら退きますんで、ちょっと休憩させてください。」
「・・・・・・・・・疲れてる?」
「そういうわけでもないんですけどねぇ。」
東屋に腰を下ろすと、当麻先輩が首をかしげながらそっと顔を覗き込んできた。
表情は変わらないが、言葉尻から心配されているのがわかってくすぐったくなる。
当麻先輩の手に鋏が握られているのが見えて、僕は薔薇を指さした。
「手入れしてたんですか?」
「そう」
「痛んでるやつは切ったほうがええっちゅーから。なぁ?」
「うん」
二人の説明にふむふむとうなづいていると、突然頭上から真っ赤な何かが降ってきた。
「どぅわ!?なんですかコレ・・・って痛!!」
「間引きしたヤツ、島ちゃんにやるわー」
「やるわーって、これトゲついたまんまじゃないですか!痛!顔、痛!」
間引きといえども、まだまだ美しさを残した薔薇は綺麗だったが、何分トゲが顔をかすっていくので、痛みに気が逸れて真面目に鑑賞することができない。
全部薔薇が落ちた後には、ひりひりとした痛みが顔に残されて。
どんな有様なのか鏡がないので確認できないが、ニヤニヤとこちらを見て笑う遊佐先輩の顔で、なんとなくひどいことになっているのはわかった。
サド公爵過ぎるぜ、遊佐先輩。
「傷が男前やな。島ちゃん。」
「・・・普通に痛いんですけど。」
「島、手当、する?」
むっつりと顔をしかめていると、薔薇が降っている間黙っていた当麻先輩が突然服の裾を引っ張ってきた。
驚いたものの、当麻先輩の不意打ちの行動に、その手が導くまま、体がゆっくり倒れて。
ぽすん。
「と、当麻、先輩・・・?」
頭が着地したのは、少し硬い感触がするそこ。
当麻先輩に、膝枕してもらってますけど僕。
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