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番外編
@-2

案の定、後輩の無遠慮な態度に、美人なリーダー格の先輩の背後に控える他の先輩方が、色めき立つ。

「お前、先輩に向かってその態度は何!?」
「後輩のクセに生意気じゃない!?」
「しかも特待だって?冗談じゃないよ。東山様が汚れる!」

皆さん綺麗な顔をしているのに。
その美貌を台なしにする勢いで顔を歪めて、口々に罵声を浴びせかける。

うう、も、勿体ない…美貌が泣く…

と、心中さめざめとその変化を嘆いていると、一人顔を歪めなかった、リーダーの先輩が僕を射るように見た。
怖!なんか食われそうな怖さが!

「さっきから全然しゃべってないけど。
優秀なお友達のお尻追っ掛けるだけ追っ掛けて、おいしいとこどりって噂は本当だったんだ?」

一実が息を飲んだのがわかった。
てか、そんな噂があるのか!
まぁよく思われないだろうな、とは思ってたけど…そんなに大きく間違ってないだけ、微妙に嫌な噂だ!

僕は、内心はひきつった笑み、表面上はうっすらとした笑みを浮かべるという荒技を行使しつつ、テーブルの下で一実の手を握りこんだ。
小さく震える程に力を込めて握られた一実の拳は、僕の手が触れると、ゆるりと力を抜いた。
なんとなくそのまま、手を触れ合わせておいて。

僕は、一実と繋がっているのとは逆の手で、頬杖をつく。
そして、その体勢のまま、上目使いで先輩を見上げた。

「先輩は僕に部屋を出ていけと。」
「あれ、喋れるんだ?」
「すいません、先輩に見とれてたもので」
「……ふーん。まぁ当たり前だけど。」

うーん、やっぱ言われ慣れてるな。揺らがないぞこの先輩。
まぁ本心なんだけどねー。
美人は正義。かわいいは正義。
これ、宇宙の心理ですから。

「出て行ったとして、僕の部屋は?今年はどこも部屋は空いていないらしいですけど。」
「僕が用意してやってもいいよ?」
「その部屋のセキュリティは?僕、セキュリティきちんとしてないと、嫌なんですよねー」
「…皆本の親衛隊?」
「まぁそんな感じです。あと僕の部屋割は、学校側で色々錯誤した結果なんで。部屋の位置とか、大きさとか、色々考えてくれたみたいなんですよねぇ。それなのに部屋替えなんてしたら、教職員の面目が立たないんじゃないですかね?」

目をそらさず一気に言葉を重ねると、先輩の目の色が変わった。
嘲るような色に、だんだんと真剣な色が混ざる。
僕は頬杖をついたままの手で、先輩を指差した。

「先輩はそのヘン、どうお考えでショー?」
「・・・教職員側なんて知ったことじゃないな。」
「先輩、それじゃ困るんですよ。僕は特待入学なんで、教職員からの評価が低くなっちゃぁ、在学に支障が出るんです。だからこそ、教職側との折衷は必要条件です。」
「・・・何が言いたい」

先ほどとは打って変わって、苦しそうな顔で先輩が僕を見る。
察しがいい人で助かる。
頬杖を解いた指で、軽く机を叩いた。

「それは僕のセリフですよ先輩。先輩はどうしたいんですか?僕の部屋を変えたいなら、それなりの準備をすべきだ。あまりにも、行き当たりばったりすぎる。僕は、この学校を辞めるつもりもないし、ここで暮らしていきたいんですよ。
今言った条件をそろえてくれれば、部屋替えもやぶかさじゃあない。」

先輩は、黙ったままだ。

「僕の部屋替えが問題を起こさな方法は、いくつかあります。生徒会の指示、あるいは風紀委員の指示であること。打診されました?」
「・・・ああ。却下されたけどね。」
「まぁ、当たり前ですかね。理由が理由だ。」

今までは、脅せばなんとかなったんだろうけどね。
僕はちょっと笑いたい気分になった。
しかしながらそれは、相手の気持ちを逆なでするだけな気がして、表情は変えず軽く頷くにとどめて。

っていうか、別に特待だって、教職員の面子とかいいんだけどね。
よく考えてみれば、僕の話がおかしいことに気がつくと思うんだけど・・・
き、気づくなよ〜。

さて、ここからだ。



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あきゅろす。
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