番外編
しつけのいろは−@
昇りきった太陽が、目に眩しいぜ。
だるくて仕方のない体に、窓から差し込む日差しが突き刺さる。
だるくて仕方ないって言うか。
おもに、下半身が。
動かないっていうか。
微妙な痛みが、っていうか。
僕は可能な限りの最重低音で、唸るように声を出した。
「ちょっとここに来なさい。」
ベットにうつ伏せで沈み込んだまま相手の名前も呼ばずに話しかけたが、室内には僕ともう一人しかいないので、必然的にだれに話しかけているかはわかるだろう。
ドアの前でむっつりと顔をしかめている東山は、しかし僕の機嫌の悪さを感じているのか、近づいてこない。
あぁ、僕の機嫌がわかるようになったのか・・・成長したな、東山・・・。
って、違う違う。
あの東山が他人の機嫌を悟れるようになったことに、ふとした感動を感じて一瞬喜んでしまったが、慌てて気を取り直す。
僕は、怒ってるんだよ。
少し緩んでしまった気持ちを引き締めて、もう一度、努めて不機嫌そうな声を嗄れた喉から絞り出した。
「東山。」
「・・・・んだよ」
「来なさい」
セリフを繰り返し、やっとのことで、しぶしぶ東山が僕が沈み込んでいるベッドに近づいてくる。
ちなみにここは東山の部屋だ。
出会った当初、うっかり覗いてしまったときには殺風景だなぁと思ったものだけれど、最近ではちょこちょこモノが増えてきて、少しずつ生活のにおいがする部屋になってきた。
増えてきたモノの大体は僕が関連しており、それを知っているからこそ、東山の部屋にいると嬉しい半分、酷くこそばい気持ちになるのだ。
東山の部屋は、僕と東山の思い出でできている。
基本的にそれ以外のものはない。
もう少し視野が広くなってくれればもっといいのになぁ、と思う一方、僕にはそんな、僕と東山だけで構成されるこの部屋の居心地が良くてたまらない。
この部屋にいるだけで、愛されている自信が持てる。
この部屋は、間違いない安心を僕にくれるのだ。
だ け ど !!!
だけど、それとこれとは話は別なんです!!!
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