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勢いよく風を切って走っているのを、肌で感じる。
早苗さんの、バイクのドラテクは超一流だってわかってはいるんだけど、ちょっとこの早さは怖い。
体に感じる非日常な重力に、早苗さんの腰にまわした手に力を込めると、腹筋が震えたのをその手に感じて、笑われたのだと気づく。
だって怖いじゃんね!普通に!
そんな沸き上がった苛立ちを示すように、ぎゅーっと腕に力を込めて締め付けても、笑いが大きくなるだけで。
まぁ僕のひ弱なこの力じゃ、早苗さんには屁でもないんだろうけどね。ちえっ。
早苗さん腹筋割れてるもんなぁ。
と、感心しつつ、まわした腕で早苗さんの腹筋辺りを指先で撫でてみた。その、次の瞬間。
「っ、うわあ!!??」
一瞬、ものすごい勢いでバイクが揺れた。
いきなり放り出されそうな傾きを感じて、とっさに全力でしがみつく。
早苗さんはすぐに体勢を立て直してくれたが、一瞬の恐怖から手の震えが止まらない。
それを感じたのか、早苗さんが一瞬速度をゆるめて片手でそっと震える手を撫でてくれたが。
(もう二度と、バイクの運転中にいたずらはしねぇ・・・!)
なんか、へんなところで冷汗かいちゃったよ全く。
そんなトラブルがありつつも、黄色と黒の間を走り抜けてたどり着いたのは、今は使われていない倉庫。
玲爾さんによると、今回の喧嘩では黒さん、この倉庫を城として使っているんだそうで。
基地だな基地。
だんだんと近づいてくる倉庫の様子は、うっすらとしか見えないけれども、周りを人が固めていてドアも固く閉ざされているようだ。
これはいったん外で止まって、中に取り次いでもらわないと、か。
面倒だなぁと思いつつも、早苗さんのお腹あたりを軽く叩いて合図を送った。
送った、のに。
ちょ、早苗さん?
な、なんで速度速めてるんで?
だんだんと近づいてくる倉庫。
驚いて騒いでいる男たちの姿も、はっきりと見えてきた。
え、え、え。
早苗さんの体がぐっと前に傾いて、それにつられて僕の体も前に傾く。
これは。
まさか。
倉庫には大きな窓がある。
そしてあえて付け加えるならば、窓のそばになぜか、大きな石がある。
なんというか・・・踏み台に誂え向きな感じの、そんな、あれが。
いやでも、そんな、まさか、ねぇ。
当たってもらいたくない想像に、それでも怪我をしないようにと、目を瞑ってぐっと体を丸めた。
次の瞬間、ふわ、と体が浮くような感覚して、次いで耳に響いたのは派手にガラスが割れた高い音。
バカでしょ。
窓から飛び込むとかバカでしょ、早苗さあああああああんん!!!
暴れん坊にもほどがあるよほんとまじでかんべんしてええええええええ
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