[携帯モード] [URL送信]
4-12

「聞いてねぇ」
「言ってねぇっすもん。」
「なんで言わない。」
「別にそれっきりになるつもりはなかったから、戻ってくるなら言う必要はないかなーって」

思ったんです・・・けど、も。
と、縮こまりつつそう言うと、黒さんの頭がゆっくりと僕の肩に降ろされて。
そしてその頭が首元に埋められたと思うと。

ガブリ、と。

「いってえええええ!!!!!」

さっきまであった肩への痛みなど目じゃないくらいの、鋭い痛みが首元を走って。
黒さんの頭を振りほどこうと体をよじるも、両脇にあった黒さんの腕が、いつの間にか僕の両手を押さえつけていて。
もがく僕の体をなんなく押さえつけて、黒さんはその後もがぶ、がぶ、と何度も噛みついてきた。
そのたびに走る痛みに、僕の体がびくびくと跳ねるのも、全て押さえつけられてしまって。

「痛い!痛いです黒さん!ひいえええごめんなさああいいいい!!!」

涙目でそう叫ぶと、やっとのことで黒さんの顔が持ち上がって。
その口から洩れた言葉が。

「嘘謡いが。」

不機嫌そうな顔でそうつぶやくと、つまらなそうに一つ鼻を鳴らしたのを、大きく瞬きながら見つめた。

嘘謡いって・・・嘘つきならわかるけど。
相変わらず黒さんの言葉は、謎掛けのようだ。
それが言葉遊びのようで、僕はうっかり誘われてしまう訳なんだけれども。

嘘謡いという言葉にふわふわと思考を遊ばせていると、黒さんは傷口を一度舐め上げてから、その牙を僕の首筋から外してくれた。



「どこの高校だ」

低い美声に問われて、一瞬躊躇った。
あまりこっちの人たちには個人情報を伝えていなかったから。
少しだけ考えて、黒さんを見上げた。

「兄ちゃんズと同じところです」

こう言えば、兄ちゃんたちに準じるはず。
黒さんたちが知っていれば、ばれてもいい情報ってことだし、公表していないのであればこの答では秘密のままになる。
試すような気持でそう返答すると、黒さんの顔がとたんに歪んで。

「鷺ノ宮か」

黒さんのつぶやきに驚きつつ、小さくうなずいた。
同時に不思議に思う。
知っていたならば、黒さんの力があれば僕が入学した情報も入ってきただろうに。
そんな僕の内心の疑問に気付いたのか、黒さんはすぐに言葉を続けた。

「有栖川が、いるだろう」

思わぬ名前が出てきて、目を見開く。
そんな僕を見て、黒さんは苦々しい表情をしたままその赤い瞳を横に流した。

「アイツのテリトリーには、俺は手が出せない。」

えー!会長スゲェ!!
てかどんな繋がりだよ、スゲー怖いんですけど。

しかしながらあの底が知れない会長ならば、黒さんとの繋がりがあってもおかしくないか・・・と、ひとり頷いていると、両手にかかっていた重みが外される。
そのまま解放してくれるのかと思えば、なぜか再び俵担ぎに抱えあげられて。
そして唐突に歩き始める黒さんに、僕はだらんと体をのばしながらも、頭の中をはてなマークでいっぱいにする。

え、ちょ、どこ行くの黒さん。
ちょちょちょ、そ、そこは!

到着したのは、倉庫内に積み上げられていたコンテナの一番上。
高さは優に5メートルはあるだろうか。
安定しているようなしていないような。
そんな決して足場は良くない危険な場所に、黒さんは僕を抱えたまま危なげなく登ってしまった。
そしてそのてっぺんに僕を、ぽん、と荷物のように置いて。
そして。

「え、ちょ!黒さん置いてかないでー!」

あの人、僕をてっぺんに置いたまま、下に降りてっちゃったんですけど!
こんなとこ、僕一人じゃ降りれない!
完全に取り残された!



[*前へ][次へ#]

12/34ページ

[戻る]


第3回BLove小説漫画コンテスト開催中
無料HPエムペ!