3-23
夏兄の恐怖からやっとのことで抜け出し、当麻先輩の存在を思い出した僕はベッドを見た。
そこには昏々と眠り続ける先輩の姿。
相変わらず僕の手は先輩のおなかの上にあって、しかし最初と変わった点があった。
「なんかあったかいと思ったよ・・・」
先輩の腹の上に乗せた僕の手を包むように乗せられた、先輩の手。
重ねるように、先輩の白魚の手が僕の手を握りしめていた。
なんだかお気に入りの道具を離さない子どもに見えて、思わず笑みを浮かべる。
かわいいは正義。きれいでかわいいって最強だよね。
「せんぱーい。起きてくださーい。」
このまま寝かせてあげたいのは山々だが、もう夕方だ。
僕は、もう片方の手を先輩の肩にかけて軽く揺さぶった。
しかし、先輩は「うーん」とうなるだけで、起きる様子がない。
本格的に起こしに入ろうと、先輩の腹に載せていた手を引っこ抜こうとしたその時。
引っこ抜こうとしたその手を、上にかぶせられていた先輩の手がぐっ、とつかんで。
次の瞬間、うっすらと当麻先輩の目が開いた。
「・・・市ヶ谷?」
「おはようございます、先輩」
寝起きでかすれた声がすげーセクシーですね、先輩。
キュートだと思ってたら、セクシーだったんですね。
先輩は何度か瞬きをすると、僕の手をつかんだままむっくりと起き上がった。
ぼんやりした目で僕を見つめてくるしぐさが、子供のようで、僕は笑みを浮かべながら少し癖が付いてしまった先輩の髪を、整えてあげた。
「・・・寝た?」
「はい、もうぐっすりと。”手当て”、どうでした?」
「なんか、ふわふわした」
「そうですか。」
僕は笑みを深めながら、立ち上がった。
ああ、やばい。今、顔デレデレだ。
たまらん。この先輩たまらん!!
「もう、夕方ですから帰りましょう?」
「どこに?」
「え?」
寮ですよ、寮。
首をかしげた僕に、先輩が言葉を続ける。
「自分の部屋?」
「え?いや・・・今日は、兄ちゃんとこにお邪魔する予定ですけど・・・」
「ふぅん」
首をかしげつつも答えると、先輩は相変わらずの無表情でうなずいた。
そしてベットから降りると、つないだままの僕の手を引っ張って、入口に歩き出す。
「え、先輩?」
「送る」
僕、そんくらいひとりで行けるんですけどー!
最近、回りみんな僕のこと子供扱いするのはなぜなんだ!
そりゃ、兄ちゃんとか一実から見れば子供かもしんないけど、少なくとも当麻先輩より大人だと思うよ僕!
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