3-12
ドアが閉まった音を背に聴き、大きくため息をついた。
な、なんか疲れたなぁ・・・会長があんな人だったとは・・・。
「曲者すぎるだろ・・・」
「へぇ、どいつのこと?まぁ、そっから出てきたってことは、生徒会の人間やろうけどー」
「う、わぁ!?」
呟いた独り言に返事が返ってきて、僕は文字通り飛び上った。
あわてて声が聞こえてきた方を振り向くと、そこには、へらへら笑っているオレンジ色の髪と、まったくの無表情で佇む銀髪の男子生徒が二人。
またまた出ました。美形。
もう、僕おなかいっぱいです。母さん。
「なんや〜?今日は生徒会やってへんのに、なんでお前、そこから出てきたん?」
「・・・あー、なんていうかお手伝い?的な?」
「手伝いは、呼ばない。」
「そやそや。いろいろ問題あるから、俺らは手伝いはあんま呼ばへんねや。」
オレンジ髪が大阪弁で、銀髪の美少年はぽつりぽつりと機械のように呟きながら、近づいてくる。
オレンジ頭は笑っているが、なんだか逃げられない気がする。
てか、俺らってこの人たちも生徒会か!
ああもういやだ!おうちに帰りたいよママー!
ネクタイの色から見て、二年生の先輩のようだ。
僕は、後ずさりしつつ、無害をアピールするようにへらりと笑って見せた。
「ほんとですって。今、中に会長も副会長も会計も、あと風紀委員長もいますから、聞いてみてもらって結構ですよ?」
「ん?なっちゃんもおんの?珍しなぁ」
「仕事、たまってる。風紀副委員長が。」
「ああ、そういや古都ちゃんがそないなこと言ってたなぁ。でもなんでこっちで仕事しとるんやろか。」
「春」
「春がいるからか?いやぁあの双子、そんな仲じゃないやろー」
「じゃあ、わからない」
「せやろ?・・・・・・・なぁ、お前は知らへん?」
「うぐっ、」
二人が会話に夢中になっている間に逃げようと、こっそりその場を離れようとしていた僕の首根っこを、オレンジ頭に捕まえられた。
苦しい苦しい!猫みたいに捕まえないでくれー!
オレンジ頭はひょろりと背が高く、襟元をつかまれているせいで首が閉まる。
オレンジ頭が、背後から顔を近づけて、耳元で囁いた。
「お前、知ってるやろ?」
「知ってる、けど、苦し、」
「うん?聞こえへんなぁ?」
わあ! ド S だ !
首元に手を持って行き、締まっているシャツの襟元を緩めようとしても、まったく力は緩まず。
気道が閉まった喉が、カハッ、と空気を搾り出す音をたてた。
息苦しさに涙が出てくる。
だんだんと意識朦朧となってきた、その時。
「遊佐、そろそろ」
銀髪の声が聞こえて、その途端、首の後ろの腕が外れて一気に気道を空気が通って行く。
その勢いに、その場にしゃがみこみ大きくせき込む。
目がちかちかして、頭を緩く振った。
ひゅうひゅうと喉が鳴るのを落ち着かせていると、そっと背中を温かいものが撫でてくれるのを感じた。
顔をあげると、銀髪の先輩が相変わらずの無表情で、僕の背中を撫でていてくれて。
「大丈夫?」
言葉は心配する台詞ですけど、声のトーンも表情も、感情なさすぎです先輩。
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