3-9 副会長の言葉に、驚き目を瞬いた僕を、会長が指さす。 「あぁ、お前が市ヶ谷島か!」 え、何々。 僕、有名になっちゃってんの? 窺うように夏兄を見ればわざとらしく眼をそらされ、春兄を見れば苦笑いを返され。 え、ちょ、何事。 話しにひとり取り残された僕は、この場で唯一教えてくれそうな副会長に、縋るようにまなざしを向けた。どういうことですかね! 目が合った副会長は、居心地悪気に一瞬ためらうように口をまごつかせたものの、口を開く。 「お前、」 「市ヶ谷島って言えばあれだろう!一年のナンバーワンブリーダー!」 井村副会長の声が聞こえる前に、会長の声が部屋に響いた。 な、ナンバーワンブリーダー… あまりの言われように呆然とする僕を尻目に、会長は指を折りながら歌うように言葉を続ける。 「あの東山四狼に、皆本アザレ。それに今年度特待注目株の日吉一実。それに、東山と皆本の親衛隊も手なずけたっていうじゃないか。」 そ こ か ! アイツら、誰の許しを得て、有名になってるんだ!!これじゃいい巻き添えだよ、もう!プンプン! てか、やっぱ一実も有名になってきたんですね・・・ふふふ、なんだか、複・雑・・・☆ てか、手なずけって・・・。平和的な話し合いでしたよ。あくまでも話し合い。 「なんか不服そうだね?」 「いやいやいや滅相もありません、会長。」 ニヤニヤと笑う、会長に直立不動で首を振る。 なんか、逆らえない雰囲気があるなぁ、会長。 そりゃ、きれいな人には逆らえない僕ですが。 なんか、もって生まれたオーラっていうのかなぁ・・・上に立つべき人、みたいな感じがする。 不快じゃないのが、すごいよね。 にやにや笑う会長の後ろで、副会長が額に手をやって溜息をついている。 ああ、きっとあの人も苦労してんだろうなぁ。 でもなんだか、あの二人を見ていると上手く合わさったピースみたいで、安定感があって安心する。 見ててほっとするっていうか・・・。 なんかいいよねぇ。ああいうのって。 二人を見ながらほのぼのしていたら、急に後ろから腕をひかれた。 「お、おぉ?」 「島、部屋帰れ」 振り返る前に、夏兄の声が聞こえた。 声だけでわかる。 ・・・なんかすげー怒ってるんですけど。 [*前へ][次へ#] [戻る] |